手堅く勝っている投資家は何をしているのか 「個人投資家の9割は勝てない」は本当か?

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次に、個人投資家がマーケットに勝っているのかを検証してみよう。「当月の損益額(確定損益額+含み損益額)/前月末時点の資産額」を月ごとのユーザーの損益率とし、TOPIXの前月比のパフォーマンスに対して上回っているユーザーを「勝ち」、下回っているユーザーは「負け」として、勝ち負けの人数比率を集計(負けの比率はマイナスで表現)した。横軸を月、縦軸をTOPIX連動型インデックスに対する勝ち(負け)の人数比率として記載している。

(出所)マイトレードの提供データを基に筆者が作成

これに関しても、TOPIXに対して勝った個人投資家の平均値は46.7%となっており、勝率は5割近い数字を残している。投資信託の世界では、投資商品を選別しているアクティブ型投資信託は、インデックス(株価指数)には中長期では勝てないと言われているが、少なくとも2018年の月次ベースではそれなりに勝っている個人投資家がいることがわかる。

ここで1つ興味深いのは、4月と9月に個人投資家の負ける比率が膨らんでいることだ。4月と9月は、それぞれTOPIXが前月比+3.6%、同+4.7%と大きく上昇しているにもかかわらず、である。ここから立てられる仮説は、個人投資家は利益が出始めると、かなり早いタイミングで利益を確定する傾向にあるということだ。おそらく、これが個人投資家で勝てない人が多く出る理由であろう。損失は耐え続け、利益は早々に確定させてしまうため、コツコツと利益を積み上げても、あるとき、大きく負けて帳消しどころか一気にマイナスになってしまう、いわゆる「コツコツ、ドカン」である。

個人投資家が勝つには「機械的トレード」に徹する

今回の検証の結果、個人投資家が毎月勝ち続けるのも、マーケットに勝ち続けるのも難しいが、通説で言われているように、つねに8、9割の投資家が負けているわけではないことがわかった。

また、個人投資家が利益を早々に確定してしまうという仮説は、非常に重要な示唆を与えてくれると考える。相場はつねに動き続け、正確に先行きを予測できない。それゆえに、高い勝率を残し続けるのが難しいわけだ。そこに感情だけでトレードをしてしまう(損失に耐え続けたり、早々に利益確定したりする)と、さらに負ける確率が高まってしまう。このことからも、個人投資家は自分なりのルール(買値から何%下落したら損切りするなど)を設定し、感情を排して機械的にトレードをするなど、自制心を持って相場に向き合う必要があることを改めて示していると言える。

個人投資家の対マーケットの勝率が半々という、今回の検証結果をどう見るかは、各自捉え方が違うかもしれない。今回の検証で、株式市場は決して「個人投資家が必ず食い物にされる場所でない」ことがわかった以上、投資資産の一部をETF(上場投資信託)などではなく、個別銘柄への投資に充ててみるのもよいかと考える。

もちろん、個人の資産運用という長期的な視点に立てば、ローコストのインデックス投信を積み立てることをメインとすべきかもしれない。だが、あえて個別銘柄へ運用資産の一部を投資することで、ニュースにも敏感になるし、社会の仕組みの理解が深まったり、マーケット感覚が身に付くなど、金銭以外のリターンも得ることが可能になるはずだ。

森永 康平 マネネCEO/経済アナリスト

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もりなが こうへい / Kohei Morinaga

証券会社や運用会社にてアナリスト、エコノミストとしてリサーチ業務に従事した後、複数金融機関にて外国株式事業やラップ運用事業を立ち上げる。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、各法人のCEOおよび取締役を歴任。現在は法律事務所の顧問や、複数のベンチャー企業のCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。株式会社マネネTwitter

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