手堅く勝っている投資家は何をしているのか 「個人投資家の9割は勝てない」は本当か?
このように、この種の調査は多少差し引いて考える必要はある。ただ、FX取引においてはよく耳にする「大負け説」ほどには、個人投資家は負けていないといえるかもしれない。
さてここからが本番だが、では、公式な統計データがない株式投資での検証はどうすればよいか。
いろいろとデータを探していたところ、自動でトレードを記録・分析してくれる「マイトレード」という個人投資家向けの自己管理アプリがあった。マイトレードは、NTTドコモの新規事業創出プログラム「39works」から生まれたサービスで、NTTドコモからの企画開発・技術協力を受け、テコテック社がサービスを提供している。
早速連絡をしたところ、本仮説の検証について快諾してくれたため、同社の統計情報を基に検証を開始した。検証期間は2018年1月1日から10月31日までの10カ月で、月ごとに検証した。調査対象は、検証期間中に最低1カ月以上のデータを持つユーザー3万3962人の取引データ。なお、単月のみデータを持つユーザーも存在するため、月ごとに検証対象となる人数は異なっている。
「個人投資家の〇割が勝てない」といった場合、何をもって勝つ、負けるとするかは人によって違うため、今回は以下の2パターンでの勝敗について検証してみた。
② 市場に勝てたかどうかという観点から、TOPIX(東証株価指数)の前月比のパフォーマンスを上回ったかどうかでの評価基準
個人投資家の「株で勝率4割」は本当か?
次の図は月ごとの「確定損益額+含み損益額」がゼロより大きいユーザーを「勝ち」、ゼロよりも小さいユーザーを「負け」とし、横軸を月、縦軸を勝ち(負け)ユーザーの人数比率として記載したものである。勝ち人数/合計人数を緑、負け人数/合計人数を赤で表記した。
当然、月によって数字は大きく上下しているが、勝ちユーザーの比率は平均で40.9%となっている。2018年10月はTOPIXが1カ月で9.42%下落したため、個人投資家も89.9%が負けているが、平均値で見れば負ける比率は59.1%である。よって、個人投資家が9割近く負ける月もあるのは事実だが、それが常態化しているわけではない。このマイトレードでの検証から言えるのは、あまり良いとはいえない今年の相場でも4割ぐらいの個人投資家が月次ベースでは勝っていると言えるのではないか。
ただし、1つ注意しなくてはいけないのは、このような投資管理アプリを利用している個人投資家はビギナーというよりも、投資への意識が高かったり、ある程度の経験値や知識をすでに持っている可能性が高いということ。であれば、前述の生存者バイアスと似たような偏りが検証結果をポジティブなほうへシフトさせていると考えられるため、やや割り引いて考える必要があるかもしれない。
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