小5で不登校になった少年が見いだした「道」 親の「いいね」が子どもの人生を変える
「みんなが勉強しているあいだ、ただ遊んでいるわけじゃないんだ」って。自分のなかに湧いてくる罪悪感を少しでも和らげようとしていたんです。
それからしばらくして、不登校を通じて知り合ったメンバーで「JERRY BEANS」というバンドを組みました。今年で結成20周年になります。
「講演ライブ」は自分への救い
続けて来ることができたのも、いろんな人の支えがあったからこそと、感謝の気持ちでいっぱいです。
僕らのライブは演奏だけではなく、メンバーそれぞれの不登校体験を話す「講演ライブ」というスタイルなんです。
そういうイメージもあって、「不登校を乗り越えたバンド」って言われることもあります。だけど「不登校を乗り越えた」なんて、メンバーは誰も思ってないんです。僕はいまだに当時のことを話して、しょっちゅうつらくなっています。
それでも「講演ライブ」を続けているのは、僕が活動に救われているからです。あのころの僕のような人に語りかけることは、過去の自分へ語りかけることなんだろうなと思います。
「大丈夫かもしれない」。そう少し思えるだけで、人生の見え方は変わります。だから僕らは乗り越えた人ではなく、「それが自分だよ」って受けいれたんだと思っています。
学校から依頼をいただいて「講演ライブ」をする機会も増えました。開始時間は午後になることが多いので、午前中から体育館に入って準備するわけですが、そんなときに遅刻をして教室に向かおうとしている子どもを見かけることがあります。
一歩一歩ゆっくり歩きながら、歩いているのか止まっているのかわからないぐらいのスピードです。でも、その気持ちが痛いほどわかるんです。行くのも戻るのもつらい。
かつての自分を見ているような気持ちになります。「この子たちに僕らの姿はどう見えているんだろう」と、悩むことがあります。
「不登校を乗り越えてすごい」とかではなくて、自分と同じだった人が笑っている未来を「人生って、けっこうなんでもありなんやね」くらいに感じてくれたらうれしい。
遅刻したり不登校になった経験も未来では個性と呼んでいるんだから。
――バンドメンバー全員が不登校経験者とのことですが、最初の出会いは?
きっかけは、母が参加していた親の会でした。子どもが過ごすスペースもあって、僕ら双子と同じように親に連れられてきた子どもがたくさんいました。そして自然といっしょに遊ぶようになったんです。
こんなこと言うと、使い古された表現のように聞こえてしまうかもしれませんが、そこが僕にとって「ひとりじゃないんだ」って初めて実感できた居場所でした。
みんなでトランプしたり、おしゃべりできる、普通に過ごす時間がとにかくうれしくて。「みんなと同じ」になりたかった僕にとってはとても特別な時間でした。