米市場で密かに語られる悲観論「3つの根拠」 現場に近い人ほど、今後の株価下落を警戒

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3つ目は、企業のファイナンスだ。低金利の環境下で、特にBBB格の企業が、金利が低いうちに資金を調達しておこうと、社債発行を増やしてきた。投資家の側は、国債金利が低位にあるため、資金運用上利回り確保に苦労しており、BBB格であれば国債よりも利回り水準が高いうえ、投資適格の範疇でもあるため、リスクも限定的で安心だと考えて、買いを進めてきた。つまり、BBB格の企業にとっては、容易に発行する社債を消化できたわけだ。

こうした企業は、当面資金の使い道がないため、自己株(自社株)買いに資金を振り向けた傾向が強かった。こうした自己株買いは、今年初からの法人減税や、海外子会社からアメリカへの還流資金の税制優遇にも、支えられてきた。

金利が一段と上昇すれば「逆回転」が始まる

しかし今後金利が一段と上昇すれば、企業の社債発行が止まり、それが自己株買いを減退させる恐れが生じる。述べたような税制優遇による企業の内部留保増加も、今年の税制改正による一過性の面もある。

加えて、社債金利全般が上昇すると、どうしても必要に迫られて社債市場から資金を調達しなければいけない企業にとっては、金利負担がかさみ、最悪の場合、発行企業の財務体質の悪化懸念、ひいては社債の格下げ観測が広がりうる。

すると、大いに社債を買い入れていた投資家が、格下げになる前に社債を売却しようとして社債価格がさらに下落する(=利回りが上昇する)展開に陥るかもしれない(実際、すでに足元で社債価格の下落が進んでいる)。すると一段と企業の金利コスト上昇懸念が膨らみ、それが社債価格を押し下げて、といった悪循環が突然急速に進むことも否定できない。

この場合、自己株買いの減退と企業財務の悪化で株価の下落が進み、同時に債券価格も下落する、という展開となり、投資家が運用で損失を被って、株式と債券の両方が投げ売りされる、というシナリオも見えてくる。
筆者がアメリカで会ったある投資家は、「これからは、株式も債券もダメだから、やっぱりキャッシュだね」と、しれっと話していた。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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