米市場で密かに語られる悲観論「3つの根拠」 現場に近い人ほど、今後の株価下落を警戒

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さて、筆者は時折アメリカに取材出張に出かけるが、この11月中旬も短期間、ニューヨークとワシントンDCを訪れた。現地の景気や市場動向に関する見解は、正直に言えば、楽観論を唱える向きが数として多かった。

楽観論者の主な主張は、「アメリカの雇用情勢に揺らぎはない」→「同国経済の約7割を占める個人消費は堅調が持続するはず」→「他のセクター(たとえば住宅)が多少不振でもそれを飲み込んで、景気全般や企業収益全体は拡大が続くだろう」、というものであった。

それに対してアメリカの株価は、予想PER(株価収益率)などでみて今は割高感に乏しく、最近の株価下落は売られ過ぎで、早晩強気相場に戻るだろう、という見解も多く聞いた。

実体経済をウォッチしている人ほど「悲観的」

一方、悲観論も少数ながらあった。そうした悲観論は後で詳しくご紹介するが、今回の出張で極めて興味深かったのは、どういった人たちが楽観論を語り、悲観論を唱えていたかについて、次のような傾向があったことだ。すなわち、「ニューヨークより ワシントンDCで」「証券・金融関係者より 実物を見ている人(商社、貿易関係者、企業コンサルタントなど)で」「マクロのデータ分析者より ミクロの動向を見ている人で」「アナリスト、ストラテジストなどの見通し作成者よりも、実際のファンド運用者で」悲観論が多かった、という点だ。

ニューヨークは地元の景気はいつも良いので、それに景況感が引きずられる傾向がある。一方ワシントンDCは、各州から議員が集まっているため、比較的全米の景況感が反映されやすい。また、マクロ(巨視的、俯瞰的)でアメリカ全体を平均的に見ている人よりも、個々の企業や産業の変調(上にも下にも)をいち早く捉えられる人の方が、先行きを見通せることが多いと感じる。

さらに言えば、市場見通しを作成しているだけのストラテジスト(筆者もその一員だろう、と言われるだろうが…)よりも、ファンドの運用を行ない、その運用成績の成否の責任をとるファンドマネージャーの方が、市場動向については、良いアンテナを持っていることがしばしばある。

ということは、数としては楽観論が多かったが、実際には悲観論が的中するのではないだろうか(上記のような見解を別にしても、たいがいは多数派の見通しは当たりにくいものだ)。

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