米市場で密かに語られる悲観論「3つの根拠」 現場に近い人ほど、今後の株価下落を警戒
こうした悲観論の背景をまとめると、次に述べる3つが主な論拠とされていた。この3つとも、これまでの好景気や株価上昇により覆い隠されてはいるものの、実はすでに経済や証券・金融市場に「仕込まれている」要因であり、ひとたび情勢が暗転すれば、景気や株価を引き下げる方向に一気に作用する「仕掛け」である、という点が共通している。1つ1つ見て行こう。
アメリカの中古住宅の在庫が少ないワケ
まずは、住宅市場だ。これまでの金利上昇や住宅価格の上昇によって、住宅着工件数や新築・中古住宅販売件数など、主要なデータは、すでに住宅市場の悪化を示している。ただし雇用の堅調さに支えられ、個人所得が増大し続けているため、今のところの住宅市場の軟調さは限定的だ。
そうした堅調さを示すデータとして楽観論者が挙げていたのが、住宅の販売在庫が、新築に比べて中古で水準がかなり低いことだ。ところがこの中古在庫の少なさは、住宅価格がまだ上がり続けているため、家の持ち主が「もっと高いところで売ろう」と売り惜しみをして市場に出回っていないからだ、と聞く。
だとすれば、住宅市場が峠を越して、住宅価格の上げ止まりないし下げ始めが見えれば、一気に家主が売り急ぐ展開になりうる。この動きが突然、価格下落の勢いを増すことになりかねない。
2つ目は、雇用情勢だ。構造的に、ノウハウ(営業マンの顧客ベースや、工場や小売店などにおける作業のやり方など)を、従業員から企業本体へと奪ってしまおう、という動きが進んでいると聞いた。そうした企業の動きは、IT化(AIの導入を含む)に支えられている。
つまり、かつては経験豊富な従業員が有していたノウハウを、企業が集中して蓄積・管理し始めた、ということだ。このため、以前であれば経験を積んだ従業員が離職するのは企業にとって痛手であったが、今は容易に解雇しやすくなっていると言える。このため、ひとたび景気に陰りが生じ、企業が雇用縮小を検討した場合、過去のケースに比べ、急速に雇用者数が減少する下地ができて来ていると推察される。
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