マツダ「CX-5」の6MT車はどんな乗り味なのか そこには「人馬一体」のこだわりがある

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 最新
拡大
縮小

マツダは、ハイブリッド車を限定的にしか持っておらず、エンジンとトランスミッション(変速機)の技術で補い、なおかつディーゼルエンジンに力を注ぐことによって燃費向上を目指してきた。そのディーゼルターボエンジンにMTを加えることで、一段上の燃費性能を実現できることになった。

欧州市場ではMTの要望が根強く、欧州市場へ投入する車種を持つことでMT採用の可能性を持つことをCX‐5の6速MT設定が明らかにした。

ところでマツダは、運転の楽しさを追求するだけでなく、正しい運転姿勢をとることにより安全な走りを実現することにも力を注ぎ、ペダル配置にもこだわってきた。そしてロードスターにも、テレスコピックと呼ばれるステアリングホイールの前後方向の調整装置を追加設定することにより、ペダルとステアリングの位置関係を体格に合わせやすくしている。

運転姿勢に重点が置かれた運転席(写真:MAZDA MEDIA WEBSITE)

正しい運転姿勢について、マツダ以外ではあまり熱心に語られることがなく、ことに軽自動車や小型車では、ステアリングホイールを前後に調整できるテレスコピック機構が設けられないため、ペダル位置が近すぎる運転姿勢を取らざるをえない状況が起きている。そのペダル位置が近すぎることが、アクセルとブレーキのペダル踏み間違いを誘発している可能性もある。

現行のロードスターが、発売後にテレスコピック機構を追加したのであれば、軽自動車も小型車も、発売後にテレスコピック機構を追加することは技術的に不可能ではないはずだ。それでも今日なお、採用の動きがないのは、原価低減を優先するあまりに、高齢者などのペダル踏み間違い事故に対する対応認識が低いからと言わざるをえない。

センサーを用いた運転支援機構によって、たとえペダルを踏み間違えても衝突を回避できればいいという話に転換され、安全運転サポート車(サポカー)として国土交通省や経済産業省が後押ししているが、それで済む話ではない。事故を起こさないまでも、ペダルが近すぎる運転姿勢は疲労の原因にもなる。根本的な問題を解決しようとせず、追加装備で顧客を呼び込もうとする商売や施策には疑問を感じずにはいられない。

話がそれたように感じられるかもしれないが、実は、マニュアルシフトの設定も、根本的に運転操作の間違いを誘発しないようにする効用がある。

クラッチ操作がペダルの踏み間違いを防ぐ

マニュアルシフトであれば、クラッチを左足で操作し、ギアを1速へ入れることで初めて発進できる。発進の際には、半クラッチを上手に行わないと、エンストしてしまう。したがって、発進するということに運転者は意識を集中させることになる。

なおかつ、半クラッチでクルマが少し動き始めたとき、前へ進むか、後ろへ戻るかがすぐわかり、間違いだと気づけばブレーキを踏む前にクラッチを切ればそれ以上速度が上がらずに済む。慌ててクラッチを急激につなげばエンストし、クルマは止まる。

そのように、マニュアルトランスミッションはシフト操作をする運転の面白さとは別に、安全にも寄与するのである。

しかも、ペダルの踏み間違いを起こす可能性が多いとみられる高齢者ほど、マニュアルシフトでの運転が身についており、逆にブレーキペダルを離せばクリープによって動いてしまうオートマチック車が怖いと感じている人もいるだろう。

次ページ「人馬一体」というマツダのこだわり
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT