決戦は12月5日、武田7兆円買収へ最終攻防戦 臨時株主総会が問う欧シャイアー買収の是非

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これに対し、武田側はロンドン証券取引所に上場する企業の買収を規制する「英国テークオーバーコード」(UKルール)を理由に、財務会計上の利益予想の開示を拒んできた。

「財務会計上の利益予想を禁ずるUKルールはない」。「考える会」を支援する市場調査会社ファーマセット・リサーチの三島茂社長はこう断言し、議論はかみ合わない。ただ、武田は11月12日に出したウエバー社長による株主宛書簡の中で、これまでに示してこなかった統合に関わるいくつかの新データを公表した。

ひとつが「買収後3年以内に、決算報告ベースの当社株式1株当たり利益を増加させる見込みです」と記した点。実質ベースでは統合初年度から1株利益は増加するが、財務会計上の1株利益は統合後1~2年目は低下する可能性を初めて示したといえる。

武田圀男・元社長も「買収反対」

もう一つの注目点は、中期的に財務健全性を改善させるため、最大100億ドル(約1.1兆円)のノンコア資産の売却可能性を示唆したことだ。ウェバー書簡を読むと、この巨額のノンコア試算売却があってようやく、財務健全性(有利子負債÷EBITDA比率)を5年以内に目標の2倍以下へ引き下げることができるとも読める。

「考える会」はロンドンで機関投資家やファンドなどと接触した。12月5日に臨時株主総会が開催されることが発表されると、国内の機関投資家向けの会合を11月11日、12日に開いた。さらに11月28日には個人投資家向けの説明会も開く予定だ。三島氏によると、これまで沈黙を貫いていた創業家の武田國男・元社長が「買収反対の意思を示した」という。これが真実なら、個人投資家に与える影響は小さくないだろう。

買収阻止には33.4%以上の反対が必要だが、創業家一族の持つ10%近い株式や6月の定時株主総会での賛成票9%などと合わせ、三島氏は「考える会に25%前後が賛同してくれる」と期待を口にする。12月3日には日本外国特派員協会で三島氏と武田和久氏の2人が会見し、「反対する会」への支持を訴える予定だ。

世紀の大買収がどちらに転ぶのか。まだ予断を許さない。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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