武田薬品、「7兆円買収」めぐるOBとの深い溝 会社側は英国M&A規則を盾に情報開示を渋る
「長い歴史と前向きな価値観を持つ会社の象徴となる」
7月2日、東京・日本橋にそびえ立つ武田薬品工業の新本社開所式で、クリストフ・ウェバー社長は誇らしげに語った。総工費660億円、地上24階建てのビルをお披露目する高揚感だけではない。余裕の表情の裏には、6月28日に開催した定時株主総会を無事乗り切ったことがある。
武田は5月、国内のM&A史上最高額となる6.8兆円でアイルランドの製薬大手・シャイアーを買収すると発表した。この買収に対し、創業家の一部やOB、株主など約130名で構成される「武田薬品の将来を考える会」は、財務の悪化リスクを懸念し反対を表明。1兆円以上のM&Aには株主総会での事前承認を必要とする旨の定款変更を、株主提案として提出した。
OBらの株主提案は10%の賛同
武田とシャイアーは買収で基本合意したものの、実現するためには、年末から来年前半にかけて双方が臨時株主総会を開き、シャイアーでは4分の3以上、武田では3分の2以上の株主の賛成を取り付ける必要がある。この定時総会はその前哨戦と目され、いやが応でも注目度が高まっていた。
焦点となった株主による定款変更提案は、9.44%の賛成にとどまり、否決された。ただ、考える会の主要メンバーは、「約10%の賛同を得られ、手応えを感じた」と満足げだ。同会の議決権保有比率は1%程度とみられ、第三者の株主から8%以上の賛同を得たことになる。総会自体はウェバー社長など取締役候補全員への賛成票が9割以上となるなど、波乱なく終わった。
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