英国、EUから「合意なき離脱」のリスク高まる メイ首相を離脱強硬派と親EU派の双方が批判
英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が、正念場を迎えている。11月25日に開催されたEU臨時首脳会合では、離脱に際しての条件を定めた離脱協定と離脱後の新協定の大枠を定めた政治宣言に関する合意(以下、単に「離脱協定合意」とする)がEU首脳により承認された。2019年3月29日を期日とする離脱協定の締結に向け、残された手続きは、英下院と欧州議会での承認となった。
しかし、この英下院での承認は極めて困難な情勢となっている。今回の離脱協定合意について、英国の与野党議員、中でも与党保守党のEU離脱強硬派の議員から大きな批判が起きているためだ。仮に英下院で離脱協定合意の承認が得られなければ、テリーザ・メイ政権は離脱協定をEUと締結することが出来ず、時間切れにより「ノー・ディール・ブレグジット(合意なき離脱)」に陥る可能性が高まる。
アイルランド島の国境が問題に
離脱協定合意の中で英国のEU離脱強硬派議員が問題としたのは、アイルランド島の国境問題に関する取り決めだ。アイルランド島の国境問題とは、英国がEUを離脱した後に、アイルランド島に通関手続きなどを行う「ハード・ボーダー(物理国境)」が設置されることをいかに阻止するかという問題である。ハード・ボーダーの設置回避は、アイルランド和平維持の観点から必須とされており、英・EU間でも既に合意されている。
しかし、アイルランド島の国境問題が最終的にどのような形となるかは、これから本格的に交渉が始まる英・EU間の新協定の内容による。このため、今回の離脱協定合意には新協定交渉が決裂した場合に備えた「バックストップ(保証措置)」が盛り込まれることとなった。具体的には、アイルランド島の国境問題が解決されるまで、英国全体がEU関税同盟にとどまるという案である。英国内で批判が強まっているのは、このバックストップに関するものだ。
離脱協定合意では、バックストップが発動されて英国がEU関税同盟にとどまった場合、その後の関税同盟からの離脱は英・EU間の交渉により決まるとされた。
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