英国、EUから「合意なき離脱」のリスク高まる メイ首相を離脱強硬派と親EU派の双方が批判
英国のEU離脱強硬派議員が強く反発したのはこの点で、EUの合意がなければ英国が関税同盟から抜け出せない仕組みは、永久に英国がEU関税同盟にとどまり、EU法に従い続ける結果につながり得る「名前だけのブレグジット(Brexit in name only)」だと批判したのである。同時に、EU関税同盟に残留を続けるということは、この間は英国独自の対外関税政策を持てなくなり、第3国との自由貿易協定が発効できなくなることも意味する。
EU首脳会合で離脱協定合意が承認されたことで、次は英下院での承認プロセスに入る。英下院での承認は、12月4日より休会と週末を挟んで5日間議論された後、12月11日に投票が行われることとなった。当面のスケジュールは図表に示したとおり。離脱協定合意に対する欧州議会の審議が3月初旬に行われる予定であり、それまでに英下院での承認が必要となる。
英下院での承認はかなり厳しい状況
英議会の承認手続きについては、2018年EU離脱法においてその詳細が既に定められている。政府が上下院に対して、離脱協定合意の承認に関する動議を提出することで議会審議は開始される。投票は下院でのみ行われ、承認には過半の支持が必要である。しかし、下院投票の行方は流動的であり、不確実性が高い。現時点までの報道に基づけば、今回の離脱協定合意が、英議会で過半(320)の支持を得るのはかなり難しい情勢だ。
各党はそれぞれの理由により、離脱協定合意に反対している。与党保守党内では、ジェイコブ・リースモグ議員や、スティーブ・ベイカー議員など離脱強硬派の議員が最低でも40名、多ければ70名近くいると考えられ、一部はすでに離脱協定合意に反対票を投じる意向を示している。前述の通り、北アイルランドのバックストップ案に関して英国がEU関税同盟から永久に抜け出せなくなるのではとの思惑が反対の大きな理由だ。
北アイルランドの地域政党で、メイ政権の過半数維持を支えてきた民主統一党(DUP)も離脱協定合意の中のバックストップ案に反対している。同党は、アイルランド島のバックストップ案が、長期的なEUとの規制調和を通じて潜在的に北アイルランドやスコットランドの英国からの独立につながる可能性があるとして反対している。下院で10議席を有しているDUPは、英国との統一を志向するいわゆるユニオニスト政党である。
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