日本のプラスチックごみが溢れ返り始めた訳 中国の禁輸措置で資源循環の前提が崩れた
業界の適正化に取り組んできた担当者は強調する。「こうした設備を使って細かく分別処理し、取り出した鉄を原料に、再び鉄を作るリサイクルは、最後に残る残渣(ざんさ)、シュレッダーダストの処理先があって初めて可能になる。残渣、ダストの持って行き先がなくなれば、リサイクルは回らなくなってしまう」。
自動車リサイクル法は2002年に制定され、2005年に施行された。自動車メーカーと輸入業者には、使用済み自動車のシュレッダーダストを引き取る義務がある。実際には、自動車メーカーと輸入業者でつくる指定再資源化機関がシュレッダーダストの搬入先を確保してシュレッダー業者などに示し、これを受けて業者が搬入する形をとっている。しかし今年に入ってこの流れが滞ることがあり、日本鉄リサイクル工業会が指定再資源化機関に対して改善を求める動きも見られる。
今のところ、廃プラスチック、シュレッダーの残渣は、中間処理会社の敷地内に積み上がり、敷地外に不適正な形で置かれるなどの事態は発生していない。
しかし、業界関係者の中には、中国の輸入禁止と日本の法改正(廃棄物処理法とバーゼル条約国内順守法が改正され、本年施行)により輸出できなくなった「雑品」の行方を懸念する声がある。日本で商売を行う中国人の雑品業者が簡易な機械を導入して分別を始めた例が目立つという。「最後に残る残渣もきちんと処理されるのだろうか」と関係者は見守る。4~5年前には、各地で「雑品」が放置され、所有者が姿をくらましたケースがあり、自治体が対応に苦慮した。根拠のない懸念とは言い難い。
中国への輸出に頼ってきた日本の今後の道は
中国は、昨年来の固形廃棄物の禁輸措置に突然踏み切ったわけではない。
香港に近い中国南部、広東省スワトウ市のグイユ村、そして上海から南に300キロメートルの浙江省台州市は、約20年前からリサイクル産業が盛んになった。2002年2月には、国際NGOのバーゼル・アクション・ネットワークなどが報告書を発表し、電気電子機器廃棄物を原始的な作業で扱う際の環境汚染や作業者の健康への悪影響について警鐘を鳴らした。
香港バプティスト大学の黄銘洪教授らは、2004年、浙江、福建、広東省の沿岸部で環境調査を実施。翌年まとめた研究データは、金属類を回収した後の残渣を野焼きした土壌を採取し、分析したもので深刻な汚染を示した。行動異常を引き起こすなどの健康影響が疑われ、欧州連合(EU)が2006年に使用禁止としたポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)の場合、最高で、日本の土壌中の平均値の約4万7000倍もの濃度だった。
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