日本のプラスチックごみが溢れ返り始めた訳 中国の禁輸措置で資源循環の前提が崩れた

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実は、中国政府は2002年にはコンピューターやエアコンなど21品目の廃家電製品の輸入について部品を含め禁止している。しかし、各地の税関で摘発後の処分がうやむやになるケースが続いた。廃プラスチックについても、中国は2004年に日本からの輸入を全面禁止すると発表した。これは山東省青島市で、建材などの原料用に輸入された廃プラスチックにごみが混ざっていたことがきっかけだったが、日本から香港を経由しての「迂回輸入」は続いた。

急速な経済成長に伴い、中国での金属資源の需要が増加したことや、銅の国際価格の急騰を背景に、リサイクル産業は内陸部から出稼ぎに来た大勢の人々が働く場でもあったため、禁輸措置の実施に時間がかかった事情がうかがえる。

廃棄物・リサイクル制度に根本的な改善策はあるのか

一方、日本のリサイクル関係者は、「人手が豊富で製造業の裾野が広く需要も旺盛、とリサイクルの条件がそろった中国に頼りすぎてしまった」と振り返る。とはいえ、よく考えてみれば「最後に残る残渣」も含めて輸出していた、とも言えるのではないか。

産業廃棄物としての廃プラ処理の流れの中で、最終的な行き場が少なくなっている問題について、現時点では「国や自治体が考えるべき課題」としての位置づけは弱い。しかし、資源循環型社会を目指すのであれば、「産業廃棄物だから事業者の責任」と言ってすませるわけにはいかない。

日本政府は現在、プラスチック資源循環戦略の検討を進めている。今年6月、カナダ・シャルルボアで開かれた主要国首脳会議(G7)で、日本と米国は「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった。安倍首相はサミットの席上、来年6月に日本で開かれるG20でプラスチック問題を取り上げたいと表明し、環境省が中心となって戦略づくりを急ぐ。

環境省の小委員会に10月19日に提示された戦略案は、「2030年までにプラスチック製容器包装の6割をリサイクルまたはリユース」「2035年までにすべての使用済みプラスチックを、熱回収を含めて100%有効利用」など、野心的な数値目標を掲げた。しかし、使い捨てのプラスチック排出量を抑えるため、「レジ袋の有料化を義務化する」と打ち出したほかは、方策の具体化はこれからだ。廃棄物・リサイクル制度全体のあり方を視野に改善策を打ち出していくことが求められる。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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