ドン・キホーテの独特な陳列に惹かれる心理 そこに買ってもらうためのメッセージがある

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これは、やや極端に棚の角度を回しています。実際には、これほどではありません。透明の細長い丸型容器に、商品を入れて陳列する通称「ギャツビー什器」で、来店客の注意を引きつけたあとに、奥の棚から、前の棚、手短な棚、と商品を広く目に入れていくような取り組みです。

どんな商売でも陳列した瞬間にメッセージを発している

どんな商売でも、商品を仕入れて、陳列した瞬間にメッセージを発しているといえます。1つの商品を大きく展開するのをフェイスと呼びます。あるいは、ゴールデンゾーンに陳列すること、そして特定の領域で多くの商品を仕入れれば、それは店舗からお客への「推薦」といえます。

現代では選択肢が多すぎるため、消費者としても情報過多のなかで商品を選ぶのに迷ってしまうものです。その「推薦商品」がよかったら、その後も店舗のファンになるでしょう。そして、それが悪い印象を残せば、お客は去っていきます。

『ドン・キホーテだけが、なぜ強いのか?』(PHP研究所)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

商品は仕入れた時点でメッセージなのです。お客にとってみると、たくさん仕入れられている商品は、売れている商品だなと思いますし、実際そうでしょう。そして「価格が大きく書かれているものは、自信があるんだな」と来店客は思いますし、実際そうでしょう。反対に、目立っていない商品は、来店客にとって存在しない商品です。

ドン・キホーテが面白いのは、その目玉商品でメッセージを発しつつ、あくまで他商品の選択肢を減らさない点にあります。選択肢が多いと選べない、と言いました。しかし、ドン・キホーテは目玉商品を提示しつつ、その他無数の商品群に没入させ、買い物の愉悦を演出しています。

ドン・キホーテがお客を魅了し続け、増収増益を続けているのは、この「買い物の愉悦」を作り出すことを徹底して追求しているからなのです。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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