保育士の「人件費比率」が低い21施設の実名 社会福祉法人に比べ株式会社は低い傾向

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人件費を搾取するようなブラック保育所を許す構造を作ってしまった「ある制度」とは?(写真:AERA dot.)
保育園への入園申し込みが本格化するこの季節。我が子をどの保育園に入れたらいいか、迷っている親も多いだろう。保育園の経営方針は施設によって様々だが、1つだけ確実に言えることは、良い保育士がいることが良い保育園の条件である。
しかし、保育士の給与は安く、人材不足が常態化している。政府や地方自治体は保育士の給与を上げるための補助金を出しており、何も対策をしていないわけではないのだが、保育士の給与は低い水準にとどまっている。
そこでジャーナリストの小林美希氏は、東京都内で経営にかかる費用に占める保育士人件費比率が低い21施設を調査(社会福祉法人運営の保育園を除く)。AERA dot.編集部と共同でアンケートを実施した(表と本文を参照)。
調査から浮かび上がったのは、保育士の給与アップが進まない“ある制度”の問題だった。いつまでたっても改善しない「保育園問題」の核心を小林氏がリポートする。

ある認可保育所の園長が嘆く。

当記事は、AERA dot.の提供記事です

「株式会社が参入して保育所は増えたが、乱立状態。コンビニの店員を募集するかのように保育士の求人が出される状態です。そうしたなかで潰される保育士がたくさんいる。心を病んで社会復帰できない若手もいて、これでは地獄のようです」

株式会社の大手保育園に就職したものの、年収が200万円台で長時間労働。経験不足の保育士ばかりが集まるなかで、子ども一人ひとりに寄り添う保育はできないと、理想と現実のギャップに悩み、地域に根差して運営されている小さな保育所に転職する若手は決して少なくない。

待機児童解消が国の目玉政策となり、保育士の処遇改善が進んでいるはずなのに、相も変わらず低賃金・長時間労働で辞めていく保育士は後を絶たない。なぜ、このような状況が続くのか。それは、2000年に大幅に規制緩和された、「委託費の弾力運用」と呼ばれる制度が大きく影響している。

私立の認可保育所には、市区町村を通して「委託費」と呼ばれる運営費用が毎月、支払われる。委託費は、預かる子どもの年齢、人数、地域に応じた「公定価格」に基づいて、計算される。委託費のほとんどは税金で賄われ、4分の1程度は保護者が支払う保育料となる。

ブラック保育園が消えない理由

委託費の内訳は、「人件費」、「事業費」(給食費、保育材料費など)、「管理費」(職員の福利厚生費、土地建物の賃借料など)の3つで、人件費が8割を占める。委託費は、もともとは、「人件費は人件費に」「事業費は事業費に」「管理費は管理費に」という使途制限がついていた。

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