保育士の「人件費比率」が低い21施設の実名 社会福祉法人に比べ株式会社は低い傾向

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記載ミスがあったと弁明する社もあったが、調理の業務委託を人件費に含めず人件費比率が下がったとする回答が多かった。ほか、自治体独自の補助金や園舎の家賃補助が多かったことで計算上、人件費が低く見えるという正当な理由もあった。それであれば、賃金の実額はどうなのか。

東京都は今年度から、新卒、3年目、7年目などの3パターンについてモデル賃金の公開を求めている。各保育所は、ホームページなどを通じて示さなければならず、都もキャリアアップ補助を受けているすべての保育施設のモデル賃金を公開する準備を進めているところだ。こうしたことから、今回の各社へのアンケートでは、都にならって経験年数ごとの年収を尋ねた(文末の回答一覧参照)。日本保育サービス、テンプスタッフ・ウィッシュは親会社が上場しているにもかかわらず、モデル賃金について答えなかった。

募集時と違う保育士給与の実態

テンプスタッフ・ウィッシュの賃金水準は実際にはどの程度なのか。大学に出されている求人票を入手すると、2019年3月卒業者向けの求人票には、こう記されていた。勤務地が東京、神奈川の場合、初任給は基本給が14万1000円。職務手当が2万7500円、地域手当が2万円、処遇改善手当が1万円ついて、合計の月給が19万8500円となる。賞与は年に2回で約3.7カ月と明記されている。

賞与を基本給で計算した場合、テンプスタッフ・ウィッシュの大卒保育士の1年目の年収は、約290万円という計算だ。残業代は、「固定残業代」とされており、「固定残業代の労働時間を超えた場合は別途残業手当を払う」とされている。昇給は年1回、2500円以上。保育士のみ3月に処遇改善手当が追加支給される。

ポピンズは、情報公開請求の対象となる前提で東京都に提出された書類を基に問い合わせたにもかかわらず、「計算された数字の根拠が不明ですが、事実と大きく数字が異なっております」としたうえ、「数字は非公開」と答えた。

Kids Smile Project社は、全体として詳しい問いには答えず、「弊社における給与水準は、一般的には高い部類に位置していると認識致しております。給食業務は外部に業務委託を行っております」とだけ回答。4年前の大学向けの求人票を入手したところ、「初任給は月19万円、賞与は年間約2カ月」とされていた。単純計算すると、年収は266万円となる。最新のマイナビでは東京で月給23万5000円だが、賞与の詳細は不明だ。

そもそも、人件費がきちんとかけられていたとすると保育士の年収はいくらなのか。

国は委託費の内訳を示しており、2017年度の保育士の平均年収は380万円とされていた。そこへ、国を挙げての処遇改善が行われているため、その分がきちんと支払われていれば年収は398万円になる計算だ。国によって経験年数のある保育士にはキャリアに応じての処遇改善も行われているため、単純計算していくと、経験3年以上では年収404万円、同7年以上で446万円になる。さらに東京都は独自の処遇改善の補助をしているため、都内で働く保育士で経験が7年以上であれば、年収は498万円になる。

筆者は、キャリアアップ補助金を受ける保育施設が東京都に提出する関係書類について情報公開請求し、表の人件費比率の低い保育所について「職員1人当たり賃金月額」を調べた。東京都の担当者によれば、「補助金を始めた初年度は保育所側も不慣れで提出書類に不備のあるものも存在するが、職員1人当たり賃金月額の12カ月分が年収に相当する」と説明。開示された報告書から各保育所の年収を計算して表にまとめた(年度途中で開園した保育所についても単純計算した)。

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