保育士の「人件費比率」が低い21施設の実名 社会福祉法人に比べ株式会社は低い傾向

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保育士の年収の全国平均は315万円(内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」2017年度)。だが、補助金が比較的潤沢な都心であるにもかかわらず、約半数が全国平均を下回ることが明らかとなった。人件費比率の低さと賃金実額の低さに一定の相関があることがうかがえる。

保育業界に長く身を置く人々は、「そもそも保育士は低賃金だと問題だった。そこからさらに人件費が削られるとは思ってもみなかった」と憤慨する。複数の自治体の保育担当者も「保育で利益は出せない。全ての株式会社を否定するわけではないが、やはり株式会社の参入には疑問を感じている」と本音を漏らし、監査する立場からも「弾力運用で人件費を流用しすぎだと思っても、国が弾力運用を認める以上、それが悪いことだと指摘できない」と唇を噛む。

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株式会社の参入が解禁された2000年以降、しばらくは営利企業立の保育所はさほど増えなかったが、安倍晋三政権の下で株式会社が急拡大。第2次安倍政権が発足した翌年、2013年10月1日時点の営利企業による保育所は488カ所だったが、2017年10月1日には1686カ所(認定こども園含む)まで増えた。委託費の使途は次々に緩和されている。

東京都の「保育士等キャリアアップ補助金の賃金改善実績報告等に係る集計結果」(2017年2月発表)によれば、人件費・事業費・管理費の「事業活動費」が収入に占める割合は、社会福祉法人で89.0%、株式会社で81.8%となっている。株式会社は収入の約2割を事業活動費以外に流用している。個別に見ていくと、流用が著しい保育所では5割にも上る。

弾力運用に一定の歯止めを

前述の財務諸表から、本来の使途である「人件費、事業費、管理費」のほかに流用された新規開設費用、積み立て、最終的な資金の残高を独自集計すると、23区にある私立の認可保育所の流用額は合計で280億円に上った(2015年度の実績)。つまり、保育士の人件費が施設整備や内部留保に回ってしまっているのだ。処遇改善が行われても、人件費の大元が流用できるのであっては、底の開いたバケツに水を注ぐのと同じ。委託費が保育士と子どもたちのためにきちんと使われるよう、弾力運用に一定の歯止めをかけるべきではないだろうか。

(文:ジャーナリスト・小林美希)

※保育者人件費比率が低い保育園に対するアンケート調査への回答は以下の通り(回答があったもののみ)

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