世界を変えた「アメリカ製造業」たちの現在地 米国四季報で読み解くアメリカ優良企業

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トランプ大統領が掲げるアメリカ第一主義は、自国産業保護のための通商政策にさっそく反映されている。その1つが今年3月から実施されている鉄鋼・アルミへの関税賦課だ。鉄鋼やアルミ製品の輸入が米国産業を弱体化し、安全保障の脅威にもなるとして、鉄鋼・同製品に25%、アルミ・同製品に10%の追加関税を賦課される。国内の鉄鋼メーカーとアルミメーカーはその恩恵を享受することになるはずだ。

米国最大の鉄鋼メーカーであるニューコア(NUE)は、鋼板、棒鋼から鉄鋼製品まで製造・販売を行っており、2017年の粗鋼生産量は世界11位に位置している。小規模な電炉による効率生産が同社の最大の特徴で、メキシコにJFEスチールとの合弁で会社を設立し、自動車向け鋼板の生産を行っている。1901年創業の老舗USスチール(X)は、米国内では主力のゲーリー製鉄所など五大湖周辺を中心に、米国外では中欧スロバキアに高炉を持つ。

2017年の粗鋼生産量は世界26位。同社も神戸製鋼所との合弁拠点で自動車向け鋼板の生産を拡大している。

アメリカ最大のアルミニウム製造企業だった旧アルコアが2016年に分社化し、ボーキサイトやアルミナ、アルミニウム鍛造などの上流部門を担うアルコア(AA)と、航空機向けジェットエンジンやガスタービン、自動車や建築資材向け製品など下流部門を担うアルコニック(ARNC)が誕生した。分社化後は両社ともにさまざまな改善を進めてきており、2018年12月期は業績回復が見込まれている。

トランプの保護主義がどこまで影響するか

鉄鋼・アルミ関税はアメリカ企業にプラスばかりではないようだ。トランプ大統領が「大好きだ」と公言していた建設機械で世界トップのキャタピラー(CAT)、世界的な需要拡大を受け、2018年7~9月期の純利益は63%増と大幅な増益となった。にもかかわらず、今4~6月期決算時に公表していた18年通期の利益見通しを据え置いたことで、市場では鉄鋼関税による材料コスト上昇が収益の重荷となると判断され、株価が大きく下落している。

この鉄鋼・アルミ関税の導入に対し、EUは二輪車などのアメリカ製品に25%の追加関税を付加する報復措置を発動した。これに反応したのが、日本でも根強い人気の大型バイクを製造・販売しているハーレーダビッドソン(HOG)で、生産の一部をアメリカ外に移転することを発表した。

同社の公表資料によると、2018年1~9月までの9カ月間の登録台数は、アメリカ国内が前年同期比8.7%減の22.2万台に対し、欧州は同0.6%増の34.8万台となればうなずける話だ。もちろんトランプ大統領がこれに即座に反応し、痛烈な批判を加えたことは言うまでもない。

日本ではあまりなじみがないが、「ジョン・ディア」ブランドのトラクターなどで知られるディア(DE)。世界最大の農業機械メーカーで、農業機械のほか小型のブルドーザーやフォークリフトなど建設土木、林業向けの機械、ガーデン用の芝刈り機なども展開している。あわせて部品販売やメンテナンス、ファイナンスも行っており、これらの部門がしっかり収益を下支えしている。

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