東洋経済では『米国会社四季報』収録データをもとに、ランキング形式で米国企業の姿を紹介している(前回は『経営者の報酬が巨額な米国企業ランキング』)。第5弾となる今回は、企業が自由に使えるおカネ(フリー・キャッシュフロー)に焦点を当てる。
フリー・キャッシュフロー(FCF)は、一般に事業活動によって得たキャッシュフローから、運転資本や設備投資など事業活動を継続して行うために必要なキャッシュフローを差し引いたものと定義されている。FCFが多いほど、M&Aを行ったり、借入金を返済したり、株主還元を行ったりということも可能になる。したがって、FCFが潤沢な会社ほど経営状態も良好とみなされる。
本稿ランキングのFCFは、S&P「Capital IQ」の「レバードFCF」を用いた。これはEBIT(Earnings Before Interest and Tax)に支払利息を含め、そこから法人税(ここでは実効税率37.5%)を引いたみなし税引き後営業利益(NOPAT)から計算したもので、以下の算出式によって表される。
なおランキングでは、銀行、各種金融に分類される企業および、米国外に本社を置く企業は除外した。
1位アップルのFCFは4兆円超
ランキングトップはアップル。FCFは387億ドル(日本円換算で4.2兆円)に達する。
直近2017年9月期は、主柱のiPhoneで高単価機種の投入や、Macの回復、アップル・ペイなどの各種サービスの拡大もあり、前期落ち込んでいた営業利益は回復した。600億ドルを超える利益水準(税引き後380億ドル)は他を圧倒しているうえ、ここに100億ドルの償却が加わるため、120億ドルの設備投資を行ってもなお、巨額のFCFが残る計算となっている。
アップルは5月1日、1000億ドルに及ぶ自己株買いと四半期配当の大幅増額を発表した。大規模な株主還元を好感し、それまで170ドル台で推移してきた株価が急騰、その後は190ドル前後に切り上がった。4位株主(2018年3月時点)のバークシャー・ハサウェイを率いる“オマハの賢人”ウォーレン・バフェット氏は、同社の株主総会でアップルの自己株買いを歓迎する発言をしたといわれている。豊富なFCFがあれば、これだけの規模の株主還元も可能というわけだ。
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