「30代母親の教育熱」が無駄に高すぎる理由 「親の見栄で教育」は子どもを幸せにするのか

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Aさん、Bさんともに、老後やそのほかの支出について考えることなく、「よい母」として教育費を捻出することに躍起になってきました。現状、高卒より大卒のほうが生涯賃金は多く、学歴がないと非正規雇用で働く比率が高いことは明らかです。終身雇用の時代、大企業への就職の最適解は、確かに「いい大学に入れること」でした。

しかし、終身雇用が崩れた今、ただ単に大学まで行かせるという価値観が正解かは、誰にもわからないでしょう。実際、一流大学を出たのにワーキングプアに陥っている人は意外と少なくないのです。ある有名な起業家は、「大学教育は無意味」といった発言をして物議を醸しましたが、将来を見据えれば、あながち間違った発言ではないのではないでしょうか。

そもそも、教育の恩恵を受けるのは子ども本人です。親が老後破産をしてまで背負うものではないはずです。

老後資金まで教育につぎ込む母親の言い分とは

「親が子どもにしてあげられるのは教育の機会を与えることぐらい。周りも皆そうしている。それができないと親として失格だ」。身の丈を超え、教育費に過剰につぎ込む方の多くはそう言います。

しかし、結局そこに存在するのは、「無知」と「見栄」ではないかと、私は考えます。そもそも、人生にかかるお金について見通す知識や機会がないこと。そして、周りからどう思われるかが、重要な判断ポイントになってしまっていること。それが「教育費過剰」の大きな要因です。

実はこういった無知と見えによって作り上げられた「よい母」は、子どもに負の影響を及ぼしがちです。自分がしてもらったから、あるいは自分がしてもらえなかったから、「子どもにもしてあげなければいけない」という強迫観念に駆られるよりも、子どもがどうしたら独り立ちしていけるかを熟慮したほうが、長い目で見ても、子どもたちのためになると思います。

さて、Bさんの例を出してわかるように、Aさんもこのままの方針を変えず何らかの対策を練らなければ、Bさんのように50代で貯蓄ゼロの可能性も大いにあります。50代半ばのBさんは、教育ローンを抱えて退職を迎えることになるので、早急な対策が必要です。

教育への投資は、環境や子どもの特性によって大きく左右されるため、きっちり予算を立てるのは難しいものです。だからこそ「見えによる教育投資」は即刻止めることです。「老後費用」や「そのほかの支出」もしっかりと把握したうえで、教育費の上限を決めたり、親子や夫婦で話し合って進めたりと、教育費との向き合い方を考えるべきではないでしょうか。

塚越 菜々子 ファイナンシャルプランナー(CFP®)

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つかごし ななこ / Nanako Tsukagoshi

税理士事務所に10年間勤務。これまで延べ500件以上の確定申告のサポートと、独立後は年間およそ200件の家計の診断・アドバイスを行う。主に30代の共働きの女性を中心に、子育て世帯でも無理のないライフプラン設計や家計管理法を伝えながら「お金に支配されない生き方」を提案している。女性起業の税務や経理に関するセミナーや、NISAや確定拠出年金を利用した「普通のママ」ができる資産運用セミナー等を年間40回以上開催。「確定拠出年金相談ねっと」認定FP。保険や金融商品を売らない独立系FPとして活動している。公式サイト

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