「30代母親の教育熱」が無駄に高すぎる理由 「親の見栄で教育」は子どもを幸せにするのか

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Bさんには、25歳の長男、23歳の長女、20歳の次女の3人のお子さんがいます。すでに、3人の教育は終わっています。

30代でご主人と離婚したBさんは、ご主人名義で購入した自宅を買い取る形で、今も自分で住宅ローンを払い続けています。公務員として仕事を続けてきましたが、離婚でひとり親になった負い目もあり、せめて子どもにはしっかりと教育は受けさせたいと考えていました。結果として、上2人は私立の4年制大学を卒業し、長女は大学在学中に1年間の海外留学もしたそうです。末のお子さんは高校を卒業後、自らの意志で就職し、現在、社員寮生活を送っているそうです。Bさんは本当に子育てに頑張ってこられた方です。

Bさんは公務員で給料自体は安定しているそうですが、1人の給料で住宅ローンを払い、子どもの学費すべてを捻出するのは決して楽ではありませんでした。子どもに奨学金を借りさせるわけにはいかないと考え、結果として50代の今、住宅ローンのほかに540万円の教育ローンが残っています。現在、貯蓄はほとんどなく、ローン返済だけで毎月の貯金もできていません。ではローンを背負ってまで教育に投資したお子さんたちのその後は? 読者の皆さんは気になるところでしょう。

「教育投資=将来の稼ぎ」とは必ずしもならない

長男は大学卒業後、家を出たものの仕事が続かず、またクレジットカードの借り入れを返済しきれずに一度家に帰ってきたそうです。今後、お金を借りられなくなったり、クレジットカードを使えなくなったりしたら、子どもが辛い思いをするかもしれないと、Bさんはその借り入れを自らの貯金で返済してしまったのです。長男は働きながらBさんに立て替えてもらった借金を返す約束をしたそうですが、その約束は守られることなく、再び家を出てしまったそうです。

また長女は大学卒業後、「やりたいことが見つからない」と、飲食店で月数万円のアルバイトをし、家に3万円ほどのお金を入れているそうです。現在、Bさんはこの長女と2人暮らしです。私は、長女が家に入れるお金をもう少し増やしてもらい、長女の分の教育ローンを少しでも早く返していってはどうかと提案しました。ところが、これ以上家に入れてもらうと、本人が使うお金が少なくなってかわいそうだと、あまり乗り気ではないのです。高度成長期ならまだしも、大学に進学したからといって安定して稼げるわけではないのは、Bさんのお子さん例を見るまでもないと思います。

人生でお金がかかるのは教育だけではないことを知っていれば、2人の状況をもっと改善すべきなのは、すぐにわかると思います。毎月の給料を主な収入源にしている大多数の家庭では、生涯年収を急激に増やすことはそう簡単なことではありません。これまでも、教育費をかけすぎることで、老後資金が不足する事態について、あちこちで警鐘が鳴らされてきましたが、私も年間150件以上の家計相談に乗っていて、いつも思うのが、次のようなことです。

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