数字で確認!すでに「移民大国」な日本の現実 話題の技能実習生より「永住者」のほうが多い

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今後、日本で働きたい外国人の多くは技能実習や留学といったやや遠回りな道を目指すよりも、まず特定技能1号の資格取得を目指し、さらにより長く働きたい外国人は特定技能2号への移行を目指すことになろう。

この新たな在留資格の対象業種は農業、建設、宿泊、介護、製造業の一部などが有力といわれているが、この中で注目は宿泊であろう。宿泊業は飲食、販売、接客、清掃などサービス業のさまざまな職種を内包しており、宿泊以外のサービス業にも外国人材の活用で大いに参考になるからだ。また、宿泊業への技能実習生の受入は2017年から始まり、かつ日本において宿泊業に就職する外国人留学生は近年増加を続けており、宿泊業界は外国人の受け入れノウハウをすでに有しているといえる。

したがって、今後は宿泊業での外国人労働者の新資格による受け入れが順調に進む可能性が高く、その際には宿泊業以外のサービス業でも新たな在留資格の適用を希望する声が大きくなることが予想される。今回の制度改革は、サービス業に幅広く従事する外国人労働者を受け入れるきっかけになりそうだ。

住民の過半数が外国人の自治体の誕生は時間の問題?

今回の外国人材の受け入れ拡大は外国人の長期滞在者の増加につながり、日本の総人口の減少を緩和する効果もある。その一方で、外国人の増加は、受入が拡大する業種や地域を中心にさまざまな影響を与えるであろう。たとえば、外国人労働者の受入拡大が進む業種では、人手不足の解消が進むと期待される一方で、日本人労働者も含めた労働環境の改善が遅れる懸念がある。

また、地域社会への影響も大きい。すでに総人口に占める外国人の比率が10%を超える自治体(政令指定都市の行政区を含む)は全国で10に上る。外国人が毎年25万人増加すれば、2060年の日本の総人口に占める外国人の割合は1割を超え、中には住民の半数を外国人が占める自治体も現れる可能性があろう。

そのため、外国人の増加は人口減少抑制の一助になる一方で、街づくりや行政などに外国人の声をどのように反映させるのかといったさまざまな課題に直面することにもなろう。

前出の総務省の調査によると、日本人が減少している自治体の割合は市区の8割、町村の9割に上るが、一方で外国人が増加している自治体の割合は市区の9割、町村の7割に上る。

たとえば、北海道夕張市は日本人減少率が市区でトップ(前年比4.0%)である一方、外国人増加率がトップ(同76.9%)となっている。人口減少に悩む地方圏にとって、近年の外国人の増加は「干天の慈雨」であり、外国住民の受け入れ拡大が今後広がる可能性があろう。

そのため地域社会では、外国人が家族も含めて暮らしやすくなるよう努力が必要になる。地方圏の自治体は、外国人を雇う企業とも一体となってそうした対応を積極的に進めていき、政府もそれを支援していく必要があろう。

岡田 豊 みずほ総合研究所 主任研究員

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おかだ ゆたか / Yutaka Okada

1967年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現在のみずほ総合研究所の前身である旧富士銀行系シンクタンク・富士総合研究所に入社。地域政策、地域活性化等を研究する。趣味の世界では、2000年のモノポリー世界選手権でチャンピオンに輝き、日本モノポリー協会専務理事の肩書も。モノポリー大阪版・横浜版の開発を監修し、各地元企業の知名度向上にも貢献している。

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