加冶屋氏はサイエンスセンターで開かれる恐竜展の監修として、シンガポールを訪れていた映画『ジュラシックパーク』でコンサルタントを務めた恐竜の専門家 Jack Horner博士とアポをセッティング。小学館が日本で出版していた図鑑『原寸大 恐竜館』の英語版を持参し、そのプルーフリーダーという大役をオファー。博士はすぐに快諾し、その翌々日には添削の入った図鑑が戻ってきたという。「恐竜のツノの中身は空洞だということが最近の調査でわかってきました」など、目からウロコのアップデートが加えられた。
東南アジアでは少ない 「楽しく学べるコンテンツ」
2つめの学習マンガは、小学館のルーツでもある。子どもの勉強を効率的にするだけでなく、楽しく学べる学習コンテンツは、これまで東南アジアではあまり見られなかった。「東南アジアは中間層が拡大していると言われている。衣食が足りて親たちに余裕が出てくれば、次は子どもの教育に目が行くはず。そのときに小学館の本が役に立てば」と加冶屋氏は語る。
3つめのコミックへの期待は、欧米への海外進出の際よりも大きい。以前、小学館の現地関連会社がアメリカで子どもがいる親たちに、「ドラえもん」に関するアンケートを取ったときのこと。多くの親が「自分の子どもがのび太のような頼りない子に育つのは嫌だ」と回答したという。これは明らかに文化の違いだろう。その点、東南アジアと日本は心情的に近しいものがあると踏んでいる。
読者への直販に関しては、デジタル出版に積極的に取り組む姿勢。各国のデジタルデバイスの普及状況などを調査し、日本の小学館や著者との間で権利処理を進めていく。ライセンスを生かした商品化、映像化についても、これまでの取引関係やオープニングレセプションからのつながりを基に模索していく。
そうして直接、書店や読者と文化のキャッチボールをする中でお互いを理解し、また、さまざまな人と出会うことで、日本では思いつかなかったような新しいビジネスを築けるかもしれないと加冶屋氏は話す。
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