インドの「危ない大気汚染」が放置されるワケ まるでガス室のような状態
ニューデリーのあるデリー首都圏の人口が2000万人を超えていたとしても、来年5月に総選挙を控えたこの時期、その重要性は、人口2億2000万人を抱える近隣のウッタルプラデシュのような州と比べると大したことではない。
「悲劇と言えるのは、連邦政府とデリー首都圏の双方に政治的な意思がないことだ。それゆえ、われわれが現在陥っている危機を巡り、互いに非難し合っている」と、政治専門家のヨゲンドラ・ヤダブ氏は語った。
有毒ガスのカクテル
人口13億人を抱えるインドの大気汚染問題は、デリー首都圏だけの問題ではない。世界保健機関(WHO)によると、世界で最も汚染された15都市のうち、14都市がインドで占められている。
だが首都ニューデリーでは、少なくとも今年は対策が講じられるはずだった。
昨年10─11月にさまざまな有毒ガスに覆われた後、デリー首都圏は公衆衛生上の緊急事態を宣言。同首都圏のケジリワル首相はニューデリーのことを「ガス室」と表現した。連邦政府当局者は、モディ首相側からそのような事態が二度と起きないよう求められたと語った。
しかしこれまで取られてきた措置で大きな進展は見られず、モディ政権とデリー首都圏、そしてニューデリー周辺の各州政府の間で責任のなすり合いが起きている。
今年、危機が悪化するなか、北部のパンジャブ州とハリヤナ州の環境相は、連邦政府の環境省が招集した会合に姿を見せず、代わりに官僚を派遣した。この2州の農家が刈り株を燃やす「野焼き」は大気汚染の主な原因となっている。
こうした農家は、作物残渣(ざんさ)を燃やさずに根覆いができる機械を購入する助成金を受けているにもかかわらず、作付けの時期を前に田畑に火を放つ。
機械の購入やその維持費、必要となる追加の人件費を賄うには、とりわけ燃料価格の上昇を踏まえると、助成金は十分な額ではないと農家は言う。