「メルケル時代終焉」でドイツは不安定化する 首相の早期退任は不可避、後継体制は流動的

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前述の後継党首の人選と合わせて考えると、「ミニ・メルケル」とも呼ばれるクランプ=カレンバウアー氏が後継党首となった場合、来年の選挙までに独自色を発揮できない限り、メルケル路線の踏襲(事実上の院政)と受け止められ、CDUが左右両極に失った支持層を奪還することは難しい。

他方、メルツ氏やシュパーン氏が後継党首となった場合、CDUの右傾化でAfDに傾いた一部の支持層の奪還につながるとみられるが、代わりに中道票を緑の党に奪われることが予想される。こうした構図はバイエルン州議会選でCSUが陥った罠と一致する。中道化による支持低迷の解は、必ずしも脱中道化ではない。

また、今回の州議会選での与党の敗北も、難民危機対応をめぐるCDUとCSU間の対立、諜報機関トップの更迭をめぐる連立与党内の意見対立などが影響したとみられている。メルツ氏やシュパーン氏が党の舵取りを担う場合、メルケル首相との足並みの乱れや党内の権力争いが、有権者の一段の離反を招く恐れがある。

SPDの凋落も連立解消とメルケル退陣を早める

第3に、連立パートナーのSPDの凋落もメルケル首相の退陣を早める可能性がある。CDU/CSUとSPDの2大政党は、昨年秋の連邦議会選での歴史的な低支持率に沈んだ後も、一段と有権者の支持を失っている。

かつては40%台が当たり前だったCDU/CSUの支持率は20%台後半で低迷し、SPDに至っては10%台半ばの支持率に沈み、緑の党やAfDの後塵を拝する有り様だ。

SPD内には大連立への参加継続を不安視する声も高まっているが、今は早期の解散・総選挙につながりかねない連立解消に踏み切れずにいる。党勢回復の機会をうかがうが、2019年・2020年の州議会選でSPDはCDU以上に苦戦を強いられる可能性がある。

旧東ドイツの3州では旧東ドイツの共産主義系政党とSPDの離党者が合流した左翼党(Linke)の支持率が高く、都市部では躍進著しい緑の党に左派の主流政党としての地位を脅かされている。党勢回復後の連立解消と解散・総選挙の機会を待っている間に、一段と党勢を失い、後がない状況で連立解消に追い込まれる恐れがある。

SPDは議会任期の折り返し地点で大連立の中間評価をするとしており、来年秋に党内で連立解消の政治圧力が噴出する可能性が高い。また、こうしたSPD内の動きを待たずとも、CDUの後継党首にメルツ氏やシュパーン氏が就く場合、CDU側から大連立解消に向けた遠心力が加速することも予想される。

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