証券でリストラの嵐が始まった! 黒字の日興が人員削減
「40歳以上を対象に希望退職者を募集します」
11月21日、日興コーディアル証券の社内ネットに、こんな情報が流された。応募期限は12月上旬で、人数の上限は定めていない。
米金融大手シティグループ傘下の日興コーディアル。すでに同グループで法人向け業務の日興シティグループ証券は、今年に入り人員削減を進めている。これが対面営業による個人取引(リテール)が主体の日興コーディアルにも波及した格好だ。
金融危機で経営悪化に陥ったシティは、米政府の公的救済が決定。全世界で5万人のリストラ計画を明らかにしている。日興コーディアルのリストラもその一環に違いないが、それだけの問題とも片付けられない。
証券会社6割が赤字
今夏以降、世界的な金融不安は一段と深刻化。9月のリーマンショックが決定打となり、株式の売買委託や投資信託、債券の販売などを収益源とする証券会社の収益環境は急速に悪化している。
証券業を主力とする主要26社(上場・非上場含む)の08年9月中間業績を合計すると、約1700億円の営業赤字となった。前中間期に約3100億円の営業利益を稼いでいた業界が、一転して赤字にあえいでいる。
26社中、営業赤字に転落したのは14社。日興コーディアルの営業利益は前年同期比48・3%減の184億円だが、むしろ健闘している。それでも希望退職を募るのは、今下期にかけての業績に相当な危機感があるからだろう。
10月以降も、あらゆる投資対象の市場価格は激変。投資家は大打撃を受け、株式をはじめリスク資産への投資意欲が極端に落ち込んでいる。一部では歴史的な株安を好機と見た個人投資家が、証券口座を新規開設する動きもある。しかし「投資単位は小口で、落ち込みを埋める力強さはない」(業界関係者)。
大和証券グループ本社の鈴木茂晴社長は「想像していたよりもマーケットの回復は遅れる」と、厳しい状況が長引くとの見方を示す。
すでにリストラは業界の一部で始まっている。独立系の藍澤証券は一部店舗の閉鎖を決定し、岩井証券も検討中だ。エイチ・エス証券は、営業赤字が続く対面取引は「半年後に改善しなければ撤退も視野」(澤田秀雄会長)という。
例外的に、営業員を抱えない低コスト体質の大手ネット証券5社は、安定的に黒字を確保している。しかし対面営業型が主流の証券会社は、今の業況が続いたら赤字を垂れ流し続けることになりかねない。今のところ、人員削減には慎重な会社が多いがその姿勢はいつまで続くのか。
(武政秀明 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)
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