「文化戦争」で分断を深めたトランプの行く先 「夜のアメリカ」で共和党をハイジャック

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共和党支持者には歴代大統領で最も人気の高いロナルド・レーガン元大統領。ナンシー夫人とともに1994年の写真(写真:REUTERS)

トランプ大統領の2016年大統領選スローガン「アメリカを偉大な国に(Make America Great Again)」 は、ロナルド・レーガン元大統領の1980年の選挙スローガン「共にアメリカを偉大な国にしよう(Let’s Make America Great Again)」に酷似する。今日、共和党支持者は一様にレーガン元大統領に憧れを抱いている。

1984年、再選を狙うレーガン大統領は、好調なアメリカ経済を前面に出した選挙キャンペーンを展開した。レーガン陣営は「アメリカの朝(Morning in America)」の名で知られる選挙CMを流し、レーガン政権下での雇用改善、インフレ低下など好景気がもたらされたことをアピールした。

差別主義的なCMに「アメリカの夜」との批判

だが、トランプ大統領は好景気を強調するのではなく、外的脅威を国民に訴える選挙戦略を展開した。中米からの移民集団「キャラバン」の入国を防ぐために最大1万5000人ものアメリカ軍兵士をメキシコとの国境に派遣すると発表。さらに大統領は、アメリカ生まれの子どもに市民権を自動的に付与する制度を、大統領令で廃止する計画も表明した。

中間選挙直前、トランプ陣営が流した選挙CMは、移民と殺人犯を連想させる内容であったことから、多くのメディアから批判を浴び、保守系で共和党寄りのフォックスニュースまでもが途中で放送を禁止した。

大統領は、移民政策や通商政策などで外国人と外国を叩くことによって、トランプの支持基盤が投票所に足を運ぶことを後押しする、といったスティーブ・バノン元首席戦略官の戦略を参考にしたと思われる。減税策や好調な経済情勢よりも、2016年大統領選でも功を奏した強硬な移民政策・通商政策など「文化戦争(Culture War)」を推進することこそが必勝法だと考えた戦略だ。反トランプ派の専門家は、トランプ大統領が展開した選挙戦をレーガン元大統領との対比で「アメリカの夜(Evening in America)」とも揶揄した。

中間選挙にはバラク・オバマ前大統領も参戦した。中間選挙前日、オバマ前大統領は民主党支持者に対し「明日はわれわれの人生の中で最も重要な選挙となりうるかもしれない。(中略)我が国の性質を問う選挙である」とメールを送付し、アメリカ社会が岐路にあることを訴えた。

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