「文化戦争」で分断を深めたトランプの行く先 「夜のアメリカ」で共和党をハイジャック
中間選挙当日、下院を奪還した民主党、そして上院を維持した共和党はいずれも勝利宣言した。次期下院議長就任が有力視されている下院民主党トップのナンシー・ペロシ院内総務は選挙後、共和党やトランプ政権との協力について「合意できるところを探る責任がわれわれにはある」と語った。トランプ大統領も両党が協力していく重要性を述べ、歩み寄りの姿勢を見せた。
だが、ペロシ次期下院議長は中間選挙結果の意義について、「トランプ政権に対し三権分立の抑制と均衡を復活させること」と語り、大統領や政権幹部に対する調査など議会の監視機能を強化する方針を示した。これまで、共和党は大統領や政権の行動を厳しく監視してこなかったが、下院を握る民主党は政治的影響力が大幅に拡大する。これに対し、大統領は下院が大統領などに対する調査を拡大した場合、下院に「戦闘的姿勢」で対抗することを表明しており、超党派で協力していく可能性は消える。
対中強硬路線は一致するも、危機対応は難しい
中間選挙翌日の11月7日、トランプ大統領はジェフ・セッションズ司法長官を事実上更迭した。民主党が下院を奪還したことで次期議会の下、大統領に対する捜査が拡大すること懸念し、大統領が先手を打ったと思われる。
民主党が下院を奪還したことで、次期下院議会では情報特別委員長が交代する。これまではモラー特別検察官のロシア疑惑捜査に批判的であった共和党のデヴィン・ニューネス委員長だったが、モラー氏を支持する同委員会の民主党筆頭理事のアダム・シフになる。ロシア疑惑捜査が拡大し、大統領に対する政治的圧力が強まることは必至である。こうした状況下、トランプ大統領は自主的にロシア疑惑捜査に関与していなかったセッションズ司法長官を切り、同捜査に批判的なマット・ウィテカー氏を司法長官代行に起用して、捜査範囲を限定することなどを狙っている模様だ。
7日から2020年大統領選は始動した。今後、民主党のトランプ政権に対する圧力は高まり、超党派での政策合意は困難を極める。特に「文化戦争」で分断社会が浮き彫りとなった中間選挙後、トランプ大統領とペロシ次期下院議長は両党間の信頼回復から始めるとしているものの、2020年大統領選が近づくにつれてその関係は再び悪化するであろう。
分断社会が浮き彫りとなる今日、最も懸念されるのが2019年以降、リスクが高まるであろう金融危機をはじめとした危機への対応だ。仮に非常事態が発生した際、民主党と共和党が協力して、アメリカの危機に対応することが可能かどうかだ。一方で、意外にも超党派の戦略として両党を結束させるかもしれないのが対中強硬策だ。米ソ冷戦時代も党派を問わず反共で国民が結束したように、議会は中国の国家資本主義政策に対する批判で党派を問わない連携が見られるかもしれない。
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