三越伊勢丹、好決算でも不安な地方店の行方 社長は「大規模店舗の閉鎖はない」と言うが…

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となると、現在低迷するほかの地方店も状況次第では、また「前言撤回」となることも考えられる。ある業界関係者は、「基幹3店や名古屋三越など堅調な地方店を除いて、苦戦店舗が軒並み閉鎖される可能性もある」と指摘する。

デジタル化の具体策とは

地方店再建という難題が残る三越伊勢丹ホールディングスだが、もう1つの課題であったデジタル化については今回、具体的な施策を明らかにした。

三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長は「大規模店舗の閉鎖はもうない」と強調する(記者撮影)

2019年2月にはスマートフォン向けのアプリをリリースし、店舗情報の発信を強化する。同時に、基幹店の商品情報や在庫情報を全店で共有し、基幹店のすべての商品が地方店でも購入できる仕組みを構築。スムーズに展開するために、伊勢丹新宿本店で“ささげ”(撮影などECで販売する商品の情報制作)スタジオを2019年4月に稼働する。

全店で販売員がタブレットを持って接客するシステムも導入する。こうした情報武装や商品情報の共有化が、地方店の底上げにつながる可能性もある。

この先、百貨店の地方店は少子高齢化によるさらなる需要先細りが懸念される。ある地方の百貨店関係者は「衣料品販売が落ち込む中で、2019年には消費増税が実施される可能性もある。地方は大変厳しい」と嘆く。業界最大手の取り組みは功を奏するか。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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