「末期がん患者」がスイスに殺到する裏事情 安楽死と尊厳死の違いを知っていますか?
どのようにして安楽死させてくれるのか? 私はてっきり医師が何らかの致死量の薬を静脈注射するものと思い込んでいましたが、それを許しているのはオランダだけで、スイスでは”幇助”の名が示すごとく、医師は致死薬を入れた点滴瓶を用意し、血管を確保するまでで、点滴のストッパーを開くのはあくまで患者なのだそうです。
医師は無論立ち会ってその最期を見届けることになりますが、点滴を開始してから臨終に至る模様をビデオ撮影し、そのフィルムを死亡直後、検死に訪れる警察官に殺人ではないことの証拠として呈示することが課せられています。
一方、オランダでは患者自らが点滴のストッパーを開くのではなく、患者に睡眠剤を含ませた後、医師が、日本では問題となった筋弛緩薬を打って患者を死に至らしめます。スイスのように警察官が検死に訪れることもなく、医師はただ警察に報告するだけで足りるようです。
オランダでは死亡者の4%が安楽死
オランダでは”かかりつけ医”制度が確立されていて、地域のホームドクターがこの積極的安楽死の任を負います。もっとも、死にたいという患者の訴えを即受け入れて安楽死させるわけではなく、数週間から数カ月かけて入念な対話を繰り返します。
その後に、患者が本当に「耐えられない痛み」に悩み、その原因である病気が「回復の見込みがまったくない」ことを確認したうえで医師は応諾します。そうして安楽死に至った患者は、全体の死亡者の4%を占めるそうです。
“安楽死”と“尊厳死”はどこがどう違うのかということですが、大ざっぱに言えば、前者は“消極的安楽死”と“積極的安楽死”に分かれ、“消極的”なほうがイコール“尊厳死”とみなされています。
“消極的”ということは、それまで続けていた、あるいは、多少の延命のために向後なされるであろう医療を拒否し、あとは自然の成り行きに任せて死を待つ姿勢です。一方、“積極的”ということは、医療をストップするのはもちろん、延命も望まず、死を早める医薬を医者に投与してもらうことで、自らの意志でそうするのですから自殺的要素も含まれます。
と同時に、もとより殺意は皆無ですが、致死薬を盛る医者は、“他殺”とまではいかないまでも“自殺幇助”には相当することになり、評論家の西部邁氏の自殺に立ち会った2人の知人だか友人だかが罪に問われるか否かが取りざたされているのも道理です。
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