日本で伝えられないアメリカ中西部の「苦悩」 トランプ選出したウィスコンシン州のその後

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「選挙? まったく関心ないね。誰が立候補しているかも知らない。自分が投票することで世の中が変わるとは思えないし」と前出のタクシー運転手が吐き捨てるように言った言葉が耳に残る。

ウィスコンシン州立大学オークレア校の校内には、中間選挙への投票を呼びかける落書きが(筆者撮影)

興味深いことに、筆者が訪問した地域では、選挙や政治にはあまり興味がなくても、トランプという名前を聞いただけでまゆをひそめる人が多かった。「トランプの言動に触発され、移民反対、人種差別や女性蔑視、アンチ同性愛主義といった(かつては政治的に正しくないとされた)偏った考えを臆面なく口にする人が増えたと感じる。身近な人にもそうした言葉の被害者は増えている」と、オークレアの元大学教員は言う。

親戚付き合いにもヒビが入ったという話も

また、共和党対民主党という党派間の対立が鮮明になりすぎ、州や市町村レベルにまで浸透してきている声もあちこちで耳にした。

ヴァルダーズ・ジャーナルのトムセン氏もこうした状況を憂う1人だ。「以前はこうじゃなかった。地方議会などでは、地域住民の利益を最優先に考え、地域の事情に合った策を党の垣根を超えて協議するのが普通だったのに、最近はお互いの主張を繰り返すだけで、議論が平行線のままということが増えた。住民の大半はもっと中庸な解決を望んでいるはずなのに」。

ヴァンダーズ・ジャーナルのトムセン氏(筆者撮影)

「政治の世界にとどまらず、地域の中の分断にもつながっている。感謝祭のディナーに集まった親戚同士の中でトランプ大統領の言動や政策について議論になり、親戚付き合いにもヒビが入ったという話も聞く。社会の分断が子どもたちに与える影響も心配だ」

普通の暮らしまで分断の影響を受けつつあるアメリカ。こうした中、今回の選挙においてウィスコンシン州で注目されるのが、民主党所属で現職のタミー・ボールドウィン上院議員と、共和党選出のリア・ビュクミア氏という女性候補同士の対決だ。ボールドウィン氏は同性愛者であることを自ら名乗った初の女性連邦議会議員であり、医療保険制度の維持を強く訴える。

アメリカの地方紙は厳しい状況に置かれているが、ヴァルダーズ・ジャーナル紙は発行部数を増やしている(編集部撮影)

対するビュクミア候補は共和党や同支持層から圧倒的なバックアップを受けて州議会議員から連邦議会の議席を狙う。民主党はビュクミア氏が反リベラル派の特定支持団体や保険会社などから「1400万ドル以上」(ボールドウィン氏)もの巨額の支援を受けている点などを強調し、民主党は積極的なネガティブキャンペーンを繰り広げる。

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