日本で伝えられないアメリカ中西部の「苦悩」 トランプ選出したウィスコンシン州のその後
ビュクミア候補と共同で選挙戦を繰り広げるのが、現職州知事で4選を狙うスコット・ウォーカー氏だ。同氏はトランプ大統領の意を受けて台湾系電子受託製造企業フォックスコン(鴻海精密工業)の工場の州内誘致に成功したとして、「1万3000人の雇用を創出する快挙」とトランプ大統領は功績をたたえる。「すでに工場建設も始まっており、州内の建設業者や資材業者などに経済効果が出ている」とウォーカー氏自身も選挙演説で主張する。
一方、ウォーカー氏は「公立学校への財政支援の大幅な削減などで教育制度を改悪したとして、教育関係者からの批判が多い」(州立大学の関係者)といい、民主党が推す、教職者で州の公共教育機関監督局トップのトニー・エヴァース氏との対決に注目が集まる。
筆者が滞在した期間だけでも、ボールドウィン氏とエヴァース氏支持を訴えるための大物による応援演説が相次いだ。10月22日には、前回大統領選でクリントン氏と民主党選出候補の座を争ったバーニー・サンダース上院議員がウィスコンシン州立大学ミルウォーキー校のキャンパスに登場。「信頼する友人で同僚」という立場でボールドウィン氏の応援演説を行った。
アメリカの良識を取り戻せるかどうか
また、26日には同じくミルウォーキーの高校にオバマ前大統領が演説に訪れ、トランプ大統領を名指ししないまでも、共和党政権が保険制度や財政政策など自らが苦心した政策をことごとく覆していることを批判し、今回の選挙の重要性を強く訴えた。
共和党議員への応援も負けてはいない。24日、トランプ大統領が「エアフォース・ワン」で同州を来訪。州北西部のウォーソー近郊の空港に演説会場をしつらえ、ビュクミア氏やウォーカー知事などの候補と一緒に演台に立った。
同市周辺の選挙区は前回選挙で特にトランプ支持が高かった地域であり、今回の演説でもトランプ大統領の演説を聞くために「会場の入り口前では前日から何十人もの支持者が場所取りのための列をつくった」と地元メディアは報じている。
アメリカ社会の変化はトランプ大統領が引き起こしたのではなく、かなり前から生まれていた社会のひずみがトランプ大統領を生んだ、と複数の識者が指摘している。そうであっても、この2年間に起きた地域社会の変化を有権者がどう感じているのかが、今回の選挙結果には示されるのだろう。
「アメリカ社会が誠実さや共感、良識や未来への責任といった価値観を取り戻せるかどうかが、今回の選挙の最大の争点だと思う」と前出の元大学教員はメールでの質問にそう回答してくれた。
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