自動運転車時代に損害保険は生き残れるか 損保ジャパンが狙う事故対応の新サービス

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損保ジャパン日本興亜・リテール商品業務部自動運転タスクフォースの新海正史特命課長は「自動運転車が普及する前でも、コネクティッドカーなど、通信でつながる車の事故対応サービスなども手掛けていきたい」とセンター開設の狙いを説明する。

ただ、それだけにとどまらない。同社の親会社であるSOMPOホールディングスは本業の保険事業だけでなく、介護やサイバーセキュリティなど、新しい事業領域の開拓を進めている。今後、自動運転車の走行に関わる事故やトラブル対応などのサービスも、一つの事業として育てていきたいという構想がある。その鍵を握るのが、今回の実証実験でも注目された「遠隔操作」だ。

実証実験では遠隔操作のシステムを構築したティアフォーの担当者が、ハンドルを操作して車を安全な場所に移動させた。将来的には遠隔操作自体も自社で手掛けたいとの思いが損保ジャパンにはある。

遠隔操作に高いハードル

ただ、ハンドルを握って自動車を操作するのは、それがたとえ遠隔操作でも「運送事業者」としての認可が必要になる。保険会社がそれを行うハードルは非常に高い。他の大手損保からは「遠隔操作については、バス会社やタクシー会社など移動サービス事業者が、そのまま運行を続けるか否かを判断し行うべきもので、保険会社が行うサービスではない」と疑問の声が上がる。

しかし、損保ジャパンは「われわれが運送事業を手掛けて、遠隔操作でどんどん自動運転車を走らせようとは思っていない。あくまで走行中の危険を回避して安全に止めるのが目的で、見守りサービスの一環として提供できないか研究していきたい」(新海氏)と反論する。同社は保険の付帯サービスとしてだけではなく、遠隔操作を含めた事故対応サービスをパッケージ化して、バス・タクシーなど移動サービス事業者向けに提供することも検討しているようだ。

遠隔操作で事故・トラブル車を安全な場所に待避させることができる(写真:損保ジャパン日本興亜)

自動運転車をめぐって、損保会社はこれまであまり表に出ない黒子的な存在だった。だが、ここにきて事故・トラブル対応の経験とノウハウが豊富にある損保会社が前面に出るケースが増えている。たとえば、10月30日に発表されたトヨタ自動車と東京海上日動火災との業務提携は、損保の事故防止ノウハウや事故発生状況・原因などのデータを、安全な自動運転車の開発に生かすことが狙いの一つだ。

自動運転社会で損保会社がどんな役割を果たすのか。その姿はまだ見えない。

高見 和也 東洋経済 記者

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たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

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