安田さん拘束現場で進む民主化運動のリアル シリア内戦の今を現地ジャーナリストが語る
堀:写真を見ていただきましょうか。これはどういう写真ですか?
ナジーブ:これは、イドリブ県の「女性市民活動センター」が、市民ジャーナリストのトレーニングをするためのワークショップを行っているところです。
堀:どんなことを教えているんですか?
ナジーブ:SNSから撮影まで、どうやってメッセージを送ればいいかなど。今あまりにもシリア市民が絶望的になっている。世界で誰も自分たちの声を聞いてくれないんですね。いつも、「空爆されてかわいそうなシリア人」と言われる。
でも彼らは「かわいそう」ではなくて、良い国を作るために立ち上がったわけです。もちろん大変なことはありますが、ジャーナリストとして、医者として、みんな頑張っているんですね。皆それぞれ自分の場所から声明も出しているし、発信したい。世界が聞いてくれないということに、すごく絶望感がある。ほかの写真を見ると、たとえばデモの中で、(プラカードに)下手な英語、下手な日本語で、「私たちはここにいるよ。兵士だけじゃなく、私たち普通の市民がいるよ。私たちはまだ民主主義、自由を求めている」と書いている。
市民ジャーナリストと多発するデモ
堀:子どもたちが柔道着を着て、英語や日本語でメッセージを書いているものもありますね。
ナジーブ:日本語で「柔道の子どもを救ってください」という意味で書いていますね。
堀:これは日本に対しての呼びかけですか?
ナジーブ:先ほどのワークショップで「私たちの悩み、声を世界に届けなきゃいけない」と言っているから、デモをやるときに、いろんな人が自分の知っている言葉を使ってメッセージを書いています。たとえば、フランス語ができる人はフランス語で書いたり、海外の友達に頼んで Skypeで「あなたの言葉で書いてください」と言って送ってもらったり。そういうプラカードを持ってデモに行く。
私は、子どもに政治的なものやらせるのはどうかなと思います。子どもの扱いにはもしかしたら問題があるかもしれないですが、あまりにも絶望感があって、いろんな手段を使って、できるだけ市民が世界に自分の存在、自分の声を届けたいということです。要するに、今日本人に対しては、「こっちにも柔道を学んでいる子どもたちがいるから守ってください」というふうに、とにかく心がつながるようなメッセージを出そうとしているんですね。