安田さん拘束現場で進む民主化運動のリアル シリア内戦の今を現地ジャーナリストが語る
日本のNGOがトルコやヨルダンでシリア難民支援を続けていることはGARDENでも継続して伝えてきました。今、イドリブ県で何が起きているのでしょうか。堀潤がキャスターを務めるdTVチャンネル「NewsX」では、シリア人ジャーナリストのエルカシュ・ナジーブさんをゲストに迎え、現地の写真や映像を交えながら、日本国内であまり伝えられていない現地市民の民主化運動に注目しました。
「代理戦争」の中、イドリブ県を取り巻く状況とは
堀:シリアでは依然として混迷が続いていますが、なかなか現地の状況が詳しく伝わってきていません。シリアで内戦が激しくなってからもうどれくらいの月日が経つかご存じですか? 8年前に始まった民主化運動をきっかけに、内戦がだんだんと激しくなっていきました。東グータでの武力攻撃が激しさを増した今年2月には、日本の複数のNGOからなる「シリア和平ネットワーク」から「シリアへの武力攻撃を直ちにやめてください」という声明が出されました(参照)。今年9月には、シリア北西部のイドリブ県において軍事的緊張が高まっていることに対し、さらなる声明が出されました(参照)。イドリブ県への政府軍による攻撃は「非人道的な攻撃になる」と、攻撃を阻止するべく国連も含め各国のNGOなども声を上げていますね。イドリブ県に注目が集まったのはどういう理由だったのでしょうか?
ナジーブ:多くの人が思っていたのは、「最後に残るのはシリア南部かもしれない」と。なぜかと言うと、ヨルダンの近くで、ヨルダンからの支援があるから。今シリアは「代理戦争」と言ってもいいですよね。それぞれの地域で国外の影響力がある。南部はヨルダン、北部はトルコ、そして中央政権の権力を支えているのはロシア。シリア政権・イラン・ロシアという同盟が支配しているのが、首都ダマスカスとその周りと、海岸部の地中海地方。イドリブ県はトルコに近い。シリアの北にトルコがあり、シリアの北の国境は全てトルコとの国境です。シリア東部はクルド民族が多い。クルド民族はトルコと対立しているから非常に複雑です。西の地中海に近づくと、民族で言うとアラブ民族、宗派で言うとスンニ派の人たちがいます。そこはトルコとの対立がないので、トルコの影響力が非常に大きい地域です。大きな軍事力で反政府を支援してきたのはトルコです。トルコと接しているシリア北西部のイドリブ県は、トルコが離したくない地域になっています。
堀:そのイドリブ県は、民主化を求め反政府活動をしている皆さんが結集してきている地域で、そこがいわゆる「現政権の最後の攻撃拠点になってくる」と言われていました。現状として、実際に攻撃は行われることになっているのでしょうか?