安田さん拘束現場で進む民主化運動のリアル シリア内戦の今を現地ジャーナリストが語る

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ナジーブシリア人はそういうところ、すごく賢いですね。(監視を逃れて通信を行うことができる)Virtual Private Network(バーチャル プライベート ネットワーク)など、いろんなテクノロジーを使っています。実は、シリアの民主化運動が始まった時、ITの青年たちが通信をサポートしようとする、「電池革命」が同時に始まりました。要するに、たとえば、政権が支配している中でも監視されずにFacebookを使う、見る、発信するということができるようにサポートしていた方々がいたということです。

ここで、その青年の中の1人について話をしたいと思います。Bassel Khartabil (バセル・ハルタビル)という方がいます。この方はパソコンの天才で、国際的に知名度の高いプログラマーになりました。彼は監視を避けて活動できるようなプログラムを作っていましたが、政権に拘束され、5年後に彼が処刑されたということが発表されました。彼は拘束された時に世界中の人が、いろんな国の人がシリア政権に「彼を釈放してください」とプレッシャーをかけました。マサチューセッツ工科大学・MITメディアラボにいる伊藤穰一さんもその1人です。伊藤さんが、Bassel Khartabilさんに仕事を与えました。政権にプレッシャーをかけるために、「MITラボに講師として来てください」と(参照)。

伊藤さんはそういう発信をしていたのですね。いつ頃ですか?

ナジーブBassel Khartabilさんが拘束されたのは2013年ごろです。

5年ぐらい前ですか。全然知らなかったです。伊藤穰一さんは、マサチューセッツ工科大学のMITメディアラボで所長をされていて、日本にTwitterを持ってこられた方でもあります。まさか、シリア政府によって拘束された優秀な方をMITに引っ張って、それでプレッシャーをかけてということをやっていらっしゃったとは。

強力な力を持つアサド政権

ナジーブそうですね。でもそれにもかかわらず、Bassel Khartabilさんは結局死刑にされて。世界が声を上げているところを、シリア政権はあえて無視して死刑にしたんです。彼は結婚したばかりだったのですが、彼の家族に知らせが入ったのは死刑から2年半経った時。死刑にしたことも言わなかったんですよ。人権の基本中の基本も守られていないですよね。彼の奥さんは2年間、世界のいろんなところに行って、「自分の旦那さんどうなっているか」「彼の釈放はどうなっているか」と希望を持って活動していました。しかし、お知らせが渡され、「2年半前に死刑にした」と。本当に信じられないことが起きています。そういう政権がこれからのシリアを治めようとしているんですよ。

先日、日露首脳会談があって、プーチン大統領と安倍首相が会談しました。北方領土問題もありますから、「経済協力して前進させたい。2人で平和な安定を作りましょう」と。しかし、そのロシアは一方で、シリアのアサド政権を支援し、空爆も行っています。そういうことに、日本の首脳は一言でも二言でも、「シリアの問題をどうするのか」と尋ねてほしかったなと思います。安倍首相は総裁選に勝ち、次の政権を担うことが確定しましたが、しっかりとした外交をやってほしいという願いはありますか?

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