安田さん拘束現場で進む民主化運動のリアル シリア内戦の今を現地ジャーナリストが語る
堀:この男性はどういうメッセージを投げかけているんですか?
ナジーブ:ここに書いてあるのは、「イドリブは武装勢力のものではなく、イドリブは現地のわれわれのものだ」と。要するに、武装勢力も存在していて、武装勢力にも抵抗しないといけない。外で空爆されてイドリブ県に入ってきた武装勢力とも戦わなきゃいけないんですね。でもその結果、シリア人はすごく強くなった。市民社会もすごく強くなった。今、世界がシリア政権を許さなかったら、シリア政権が本当に崩壊してくれたら、「その後カオスになる」と心配されています。でも、私は市民社会を毎日見ているのですが、皆さんが衝撃を受けるくらいすばらしい社会が生まれると思っています。
堀:本当の民主的なアクションが、ここからどんどん成熟してきているということですね。
ナジーブ:非常に成熟している。私も最初は空爆で涙が出ていましたが、今は市民社会がすばらしい活動をしていることに、本当に強い立派なシリア人が生まれてきてくれたことに感動しています。
堀:ナジーブさんに指摘されて初めて気がついたのは、「シリア」というキーワードでいくと、難民か、武装した兵士か、政府か、大統領か、という議論になりがちですね。イドリブ県で日々暮らしている皆さんが今も平和的に民主化を求めてアクションしているということはなかなか伝わってきません。
ナジーブ:音楽をやっている人、演劇をやっている人、柔道をやっている人、ジャーナリストのワークショップをやっている人。すごくすばらしいアクションがある。前のシリアよりも、社会がすごく活発なんですよね。
矛盾しているところなのですが、戦争だからこそ抑圧がない。生活の問題は非常に大変なんですけど、アサド政権の厳格な抑圧、すべて見張ってすべて抑圧する人がいないわけです。そうすると、空爆の中でも演劇をやっている人は今までシリアになかったようなとてもすてきな演劇をしたり、柔道のあり方も変わったり。以前はスポーツ業界の中でも非常に汚かった。偉い人の息子がいつもチャンピオンでなきゃいけない。(現大統領の父である)前のアサド大統領の長男、次の大統領になるはずだったけど交通事故で亡くなった長男がいるのですが、イメージ作りのために、その長男は馬術でいつも勝たなきゃいけない。しかし、一度他の人が間違って彼に勝ってしまった。結果、その人は23年間刑務所に入ったんです。そういうレベルです。
強権国家とプログラマー
堀:非常に強権だということですね。しかも、そうしないと生きていけない社会があることですよね。
ナジーブ:そうですね。
堀:すごく基本的な質問なのですが、強権によって運営されている国というのは、さまざまな通信、FacebookやTwitterなどのSNS も監視下に置かれていて、なかなか外部とつながることができないというような状況もありますよね。そのあたりはいかがでしょうか?