首都圏で「早朝無人」駅、脱鉄道へJR東の焦燥 大量退職が間近、駅業務の合理化を加速

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その解決策の一つが、業務委託の拡大だ。JESSでは新卒社員と出向者のほか、JR東を60歳で定年退職後、再雇用された「エルダー社員」が中心となっている。社会的に定年延長の動きもある中で、エルダー社員の活用が必要であることは間違いない。実際、減り続ける単体社員数とは対照的に、グループ全体の社員数は横ばいを維持している。

将来的に単体約4万人体制を想定?

JR東が今年7月に発表した「変革2027」。同社の長期ビジョンを示したものだが、ここで標榜するのが「生活における豊かさ」を起点としたサービス。具体的にはスイカや乗客データなどのビッグデータを活用して生活サービス事業の拡大を図る。先日、JR赤羽駅で決済にAI(人工知能)を活用した無人店舗の実験店を設置したように、新しい技術も積極的に活用する考えだ。

JR赤羽駅のホームに10月17日から2カ月間、設置中の無人店舗(編集部撮影)

これまでJR東の成長を支えてきた首都圏の人口は2025年以降減少に転じる見通し。そうした中で鉄道事業の合理化は急務だ。長期ビジョンには明記されなかったが、会社側は将来的に単体約4万人の体制を想定しているとも言われる。

ただ、急速な合理化はきしみも生みかねない。「今年3月まで、JESSの新卒社員は入社から5年間は昇給がなかった」(JR東関係者)など、その待遇は本社に比べ大きく見劣りする。エルダー社員が駅の現場で働く際の環境整備も大きな課題だ。また、駅が無人化された場合、聴覚障害者など交通弱者とどう向き合うかという問題もある。

JR東は今後とも、交通インフラとしての公共性の担保と私企業としての利益追求を両にらみする難しい舵取りを迫られそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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