「史上最悪バスジャック犯」の悲しすぎる真実 ブラジルを震撼させた事件の裏で起きたこと
男は11人を人質にバスに立てこもった。そのバスを警察が至近距離で取り囲む。事件を聞きつけたメディアとやじ馬が集まり、すぐにテレビの生中継が始まった。すると男は車内から外に向けて発砲。逃げ惑うメディアとやじ馬たちで現場は騒然となった。犯人の男は警察に「逃走用の車」を要求した。
軍警察は特殊部隊の出動を要請。市街戦では世界最強と言われる特殊部隊「BOPE」(ボッピ)がバスを取り囲み、腕利きのスナイパーが狙撃態勢に入った。バスの窓から身を乗り出す犯人の男。しかし、特殊部隊は男を撃たない。テレビの生中継が続く中で、特殊部隊の手により、男の頭が撃ち抜かれる瞬間をブラジル国民に見せるわけにはいかなかったのだ。人質の命を守り、かつ犯人を生きたまま確保する。これが特殊部隊に課せられたミッションだった。
口紅で書かれた“死の宣告” 命のタイムリミット
一向に要求に応じない警察に業を煮やした犯人は、驚くべき行動に出る。人質の女子大学生に銃を突き付け窓に連れて行くと、口紅を渡し文字を書かせた。その模様がテレビカメラに収められた。「逆さ文字」で書かれた犯人のメッセージ。ブラジル中がかたずを飲んでその様子を見つめた。
「彼は悪魔と手を組んでいる」「彼はやり遂げる」。そして、最後のメッセージが人々を戦慄させることになる……「全員を殺す。午後6時に」。
犯人は窓から身を乗り出し叫んだ。「いいことを教えてやるよ! そっちが本気ならこっちも本気だ。脅しにビビる俺じゃない! こいつの頭が飛ぶ前に手榴弾とライフルをよこせ。6時になったらブラジル中に、こいつが死ぬのを見せてやる!」。まさに「悪魔の宣告」だった。
膠着状態が続く中、刻々と時は過ぎ、犯人が告げた「午後6時」まで20分となった午後5時40分、男は、メッセージを書かせた女子大学生の頭に布を被せ、バスの床にひざまずかせると……なんと、タイムリミットを前に女子大学生を撃ったのだ。パニックに陥る人質たち。女性が絶叫する。「彼女を殺したわ。床が血だらけになっているのよ」「言うとおりにしてよ。1人死んだのよ」。
そして、犯人は、その女性の顔に銃を突き付けた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら