トランプ誕生は「1960年代からの必然」だった 「政治学の巨星」パットナムが語るアメリカ
住民たちは、「私」の子ども、だけを気にかけるのではなく、地域全体について「私たち」の子どもという認識を持って、平等への機会を創ったのだ。それがIの時代をWeの時代に反転させる扉を開いた。教会やロータリークラブなどをベースとする顔の見える関係というものは、こうした動きを生み出すことができる。そうした自発的な、近いネットワークを重要視すべきだと思う。
SNSは変革のきっかけとなるか
私が地域のネットワークを重視すべきだ、という話をすると、インターネットを通じたグローバルなネットワークも変革の力として重要ではないか、と聞いてくる人がいる。どちらも、ネットワークという点では同じではないかと。
確かに、SNSなどのネットワークは強力だ。フェイスブックの共同創業者が私の教え子だったこともあって、私はかなり初期からフェイスブックを利用しているし、SNSを使って遠くにいる家族と密なコミュニケーションもとっている。研究者になった孫の1人とは、論文などについて、かなり詳細なやりとりをしている。
その意味で私はSNSのネットワークに肯定的だが、私がつながっているのは、もともと私と顔見知りだった家族、友人のみだ。フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションがあったからこそ、SNSは私と家族、友人たちの関係を強めてくれるとも言える。
対面の関係と、SNSなどを通じた関係は、違う金属を掛け合わせると合金が作られるように、新しい人間関係を生み出すだろう。生まれた時から、SNSなどのツールを持っている若い世代は、私とは違うコミュニケーションを発展させていくはずだ。
ただ、会ったこともない、インターネット上だけでつながった相手を、心から気にかけることができるのか。そうしたつながりが、かつてアイオワ州で始まった高校教育の開放のような動きにつながるかどうか、私には何とも言えない。
私に残された時間は少なくなり、家族にはもう本は書かないと話していた。本を書くことは、家族との時間を犠牲にすることでもあるからだ。しかし今、私は新しい本を書いている。今を、未来のよき始まりとしたい、という思いを込めてだ。
以前に書いた本は、アメリカ人のストーリーをベースに書いたものだったが、次の本では、たくさんのデータを基にして、Weの時代への展望を書きたいと思っている。その本が、日本の皆さんのお役に立つことを願っている。
取材協力:村松岐夫(京都大学名誉教授)
鹿毛利枝子(東京大学准教授)
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