韓国馬が地元G1で日本馬にボロ負けする理由 競馬の「日韓対決」は日本が韓国に「圧勝」

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ここまで国際競走に対する韓国競馬の意気込みとジレンマ、韓国人のギャンブル気質について触れてきたが、この国でも避けて通れないのがファンの高齢化問題だ。KRA広報によると「韓国の競馬熱は2002年がピーク。2010年に再び盛り上がったが、その後は売り上げ、入場者数ともに年々減少し続けている」とのことだ。実際数字を挙げてみよう。

入場者
2016年 1249万8600人
2017年 1176万4300人
2018年 1147万6400人(9月9日現在)

売上高
2016年 約7兆1000万ウォン(7100億円)
2017年 約6兆6000万ウォン(6600億円)
2018年 約6兆4000万ウォン(6400億円、9月9日現在)

今年は下げ止まり傾向がみられるものの、「政府に『宣伝はするな、売り上げは伸ばせ!』と言われても困りますよね。韓国には競馬以外に競艇(ボートレース)、競輪、スポーツtoto(くじ)、それにカジノがありますが、競馬のシェアは年々下がっている。これで国内向けのカジノができたらどうなるか」(KRA関係者)と先行きに不安を覚えていた。

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そこで、KRAのライバルで韓国のボートレース、競輪、スポーツtotoを一括で管理運営する「KSPO」に問い合わせてみたが、こちらの答えも芳しいものではなかった。

たとえば2016年度の年間売り上げを日本円に換算するとtotoで4441億円、競輪で1866億円、ボートレースで689億円だったのに対し、2017年度はそれぞれ4199億円、1772億円、636億円とすべての部門で減少。「政権交代のあおりでネット投票ができなくなった今年は落ち込みがさらにひどくなっている」と嘆き節だった。

「客層は古くなる一方で若い客層の穴埋めができない。どこもかしこも少ないパイの奪い合いだ。ボートレースももう1カ所、F1開催が幻になったヨンアン(=全羅南道、韓国南西部の都市)に造る話が出ていますが、実現性となるとどうでしょうか」

ギャンブルの未来が明るいのはどちらの国か?

少ないパイの奪い合い。これは私が毎日のように通う日本の公営競技場の施行者から聞く言葉だ。一時の危機的状況を脱したかに思える日本のギャンブル界も安閑とはしていられないだろう。

では、日韓のギャンブル産業の未来はどちらが明るいのか。あるいは、どちらが飽和状態に達していないのか。カジノが残されている日本か、それとも大っぴらに宣伝できなくても、そこそこ売れている韓国か。人口、国の規模を考えると両方とも可能性が十分ある気が、こと競馬に関して言えば、南半球を含めた市場規模の大きい芝レースを実施していない韓国競馬に伸びしろは大きいと思われる。

高齢化問題をはじめ、社会貢献、ギャンブル依存症問題など、日韓ともに共通の課題は多い。いずれにしろ、特効薬は見当たらないが「徹底したファンサービス」「提供するレースレベルの向上」に加え「国際化」がひとつのキーワードになることは間違いない。

山本 智行 フリーランスライター

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やまもと ちこう / Chikou Yamamoto

1964年岡山生まれ。スポーツニッポン新聞社の記者として競馬、プロ野球、ゴルフ、ボクシング、アマ野球を担当。その後、東京、大阪、福岡のレース部長などを経て、現在フリーランスライター。ギャンブル全般に精通、特にプロ野球界、公営ギャンブル界に幅広い人脈を持つ。趣味は映画鑑賞、観劇、旅打ち、ちなみにB'zの稲葉浩志とは中高の同級生。

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