農業と工業のリアルを伝える「専門紙」の実像 日本農業新聞と日刊工業新聞、制作の裏側

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

強みのひとつは「農業政策」取材。農林族といわれる国会議員、農林水産省、全国農業協同組合中央会(JA全中)、この3つを軸に、日本の農業政策がどのような議論でどう決まっていくのか、綿密な取材をしています。長年、農政を取材してきた藤井さんには危惧している現状があります。

「2017年10月の衆院選では、日本農業新聞は『官邸主導の農政』という言い方をして報道してきました。族議員は批判されがちですが、私たちにとって民主主義はボトムアップ。農業団体を含め、いろんな現場の声があり、政党で議論をして最後は与党で調整するというのが民主主義だという考えです」。

日本農業新聞(写真:news Hack by Yahoo!ニュース)

「農林議員の相対的な地盤沈下をすごく感じています。人口減で条件が悪い農村部の過疎化が深刻になっているなかで、農業・農村の現状を分かっている国会議員が非常に少なくなってきている。小選挙区制で、農業だけでなく専門的な知識を有する議員が少なくなった。しかし、それでも現場の意見は吸い上げて欲しい、政策に反映して欲しい。官邸主導である限り、現場の意見はいつまでも反映されない、その危機感です。競争力の一点張りの今の農政に対する怖さも感じます。改革は必要。ただ、なぜそれが官邸の結論ありきなのか? 現場を壊して終わってしまわないか? 地域としての『農村』は残せるのか? 農家だけでなく消費者にも影響を与えかねない。今後も問い続けたいです」(藤井さん)

日本農業新聞では、毎年1000人の「農政モニター」から、さまざまなテーマで農政に関する農家の世論調査をしてきました。選挙期間だけでなく、現場の声を大切にしてきたからこそ、危惧する現状があります。

データを生かし、消費者に新しいアプローチも

一方で、日本農業新聞のデータとインターネットを使った、消費者への新しい情報提供も始まっています。農畜産物のインターネット市況として、2010年4月から立ち上げた「netアグリ市況」。野菜や果物、花、畜産、商品先物などの相場を取引当日に掲載しています。こうした農家向けの情報を、2017年12月からスーパーで買い物をする消費者にも届けるようになりました。

三井物産子会社のマーケティング・グラビティが、食品スーパーのタブレット端末付きのショッピングカートを展開。このタブレットに日本農業新聞の「netアグリ市況」の情報が活用されているのです。

タブレットに表示されるデータの一例(画像:news Hack by Yahoo!ニュース)
次ページ一人でも多くの消費者に食や農に興味を持ってもらいたい
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事