農業と工業のリアルを伝える「専門紙」の実像 日本農業新聞と日刊工業新聞、制作の裏側

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新聞という紙媒体のほかに、日刊工業新聞は、Yahoo!ニュースに「日刊工業新聞電子版」と「ニュースイッチ」の2媒体で記事を配信しています。「紙は物理的な縛りがあるが、ウェブにはその限りがない」(大崎さん)ということで、産業界のニュースを2方向で届けていますが、ウェブでいえば日刊工業新聞サイトには「工業用地情報」といった産業専門紙ならではのコンテンツがあります。

「産業」「経済」の見出しが踊る、2017年の衆院選を伝えた日刊工業新聞(写真:news Hack by Yahoo!ニュース)

また昨年の衆院選、政治部がない日刊工業新聞は産業視点で紙面展開。産業と一言でいっても工業から医療・食品や建設・住宅と多岐にわたり、各党の公約や考えが各業界にどのような影響を与えるかに重点を置いて報道。全国の中小企業の社長の声を集めて掲載するなどの紙面づくりは、日刊工業新聞ならではの選挙報道でした。

「2017年を振り返ると、日本のモノづくりを代表する大企業の不祥事が目立ちました。専門紙として追いかけるのは当然として、検証も必要。また、その大企業とつながる数多くの中小企業の声を集めるのも私たちの役目です」(大崎さん)

企業と企業の関係も伝える日刊工業新聞にとって、選挙や一企業の一出来事がその企業だけに影響がとどまらないことを記事に込めるわけです。

産業はつながっている

そうした「B to B」でいえば、自動車業界を担当していた記者が異動でエレクトロニクスや商社を担当することがある日刊工業新聞。業界・業種でみれば違う世界ですが、「産業はつながっています」(大崎さん)。車を製造するには鉄や機械が必要、完成した車を運ぶには手段や場所が必要。「担当が変わっても必ず前の経験が生きる。それが産業取材の面白いところでもあります」。

Yahoo!ニュースにも配信されている「ニュースイッチ」の編集部。日刊工業新聞社のニュースを「もっと新鮮に、親しみやすくお届けするサイト」を掲げています(写真:news Hack by Yahoo!ニュース)

さらに、大崎さんは学生に向けて思いを続けます。

「就職を考えた際、多くの方がいわゆる大手企業を想定されますよね。でも、例えば、NASAのロケットの部品を作っている企業など、日本には面白い仕事、いい仕事ができる企業が都市圏やそれ以外の地域にもたくさんあります。ですから、私たちの記事が学生の皆さんの選択肢になってほしいですね」。

日刊工業新聞社(写真:news Hack by Yahoo!ニュース)

そして現在、日刊工業新聞が注力しているのは、「次世代自動車」「AI」「IoT」「ロボット」の4分野。

「私たち社の考えは、『産業界の羅針盤に』。日本のモノづくり、各企業の努力・技術力を伝えていき、産業界が進む方向性、未来を示せればと考えています。そのビジョンが今、次世代自動車やAI、IoT、ロボットというわけです」

この4分野の記事はたびたび紙面一面に、またある日の同紙サイトのトップニュースには「【電子版】ルービックキューブをわずか0.38秒で、世界最速ロボット開発(動画あり)」という記事が掲載されています。

AIやIoTなどの技術革新が産業構造に変革をもたらすといわれる「第4次産業革命」。日刊工業新聞は遠くない未来に訪れるその変革を見据え、産業専門紙として日本のモノづくりの最先端、ビジョンも示し続けていきます。

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