農業と工業のリアルを伝える「専門紙」の実像 日本農業新聞と日刊工業新聞、制作の裏側
「食と農の総合メディア」とは?
日本農業新聞社は1928年に発行を開始した日本唯一の日刊農業専門紙。当初は、農家が業者に言い値で買い叩かれないよう、野菜などの相場の情報を知らせる「市況通報」としてはじまりました。農家をサポートする情報を伝えるという路線は保ちつつ、現在は農家だけでなく消費者にも情報を伝える「食と農の総合メディア」として、約100人の記者が全国10カ所で取材しています。実は記者のなかで農家出身は1割ほどだといいます。
「Yahoo!ニュースのユーザーは消費者目線の方が多いのではと思います。消費者として1円でも安く農産物を買いたいというのはある意味で当然。ただ、その裏で一瞬でもいいのでその野菜を作っている農家の姿を思い浮かべてもらえるとうれしいな、そういう思いで配信しています」
そう語るのは、日本農業新聞・農政経済部長の藤井庸義さん。2017年3月にYahoo!ニュース トピックスで掲出した「もやし業界 窮状を訴え 度を超す特売 早急に歯止め」はネットで大きな反響がありましたが、こういった消費者の反応はとても意外だったそう。
「例えば、災害などで野菜が高騰して消費者が困っているという報道の一方で、農家は儲かっているという誤解が生じる。野菜が高騰しても、決して農家はハッピーではないんです。もやしや最近では豆腐も代表例ですが、日本農業新聞が発刊した当初の『農家が相場がわからないために、業者に安く買い叩かれてしまう』という構図は今でも残っています。流通が寡占化して大きなスーパーなどのバイイングパワーがどんどん強まっている。農家が再生産できる適正な価格で消費者に売って欲しい、そういった情報と問題提起を発信していかないといけないと考えています」(藤井さん)