佐野精一郎 三洋電機社長
経営再建の過程で創業家社長が更迭されるなど、依然として混乱のさなかにある三洋電機。2006年度の決算発表会見の場で、佐野新社長が再建への決意と意気込みを語った。(『週刊東洋経済』6月9日号)
社員も落ち着いてきた 今年度は最終黒字にする
1:前期決算もリストラ費用で赤字決算に終わりました。
残念ながら最終赤字が続いたが、営業損益ベースでは黒字転換が実現できた。営業利益の絶対額(496億円)も昨年秋に予想した数字を大きく上回った。電池、業務用設備機器、電子部品といったコア事業が収益を伸ばしたうえ、2005年度から進めてきた一連の構造改革の成果も出ている。もちろん、今年度は最終黒字化が最大のテーマ。電池の原料高や税制変更に伴う償却負担増加などで営業利益は昨年度よりやや減るが、構造改革費用が一巡し、最終損益では4期ぶりの黒字(200億円)を見込んでいる。当社復活の道筋を明確にする年にしたいと思っている。
2:最終黒字化実現に向けた具体的な施策については。
(前期赤字転落した)携帯電話事業は生産の海外シフトによるコストダウンを進め、今期は利益を確保する。(OEM主体の)デジカメは足元の受注が回復しており、今後も安定した受注獲得に向けて営業、商品企画を強化していく。環境は厳しいが、(前社長が更迭された春と比べ)社員の気持ちは徐々に落ち着きを取り戻し、失っていた自信も回復しつつある。全社一丸となって、今年度の最終黒字化という復活へのハードルを着実に乗り越えていきたい。
3:電池事業は三洋の屋台骨を支える稼ぎ頭であり、その収益悪化は気掛かりです。
確かに今年度は電池事業の収益が踊り場を迎えるが、あくまでニッケルやコバルト等の原材料高が主因。主力のリチウムイオン電池を見ても需要自体は引き続き好調で、徳島工場などを中心に一段の生産能力増強も考えている。
4:創業家の経営から佐野体制になって何が変わるのですか。
環境・エナジーの先進メーカーという経営ビジョンは踏襲しつつ、利益重視の経営をやりたい。営業利益をもっと増やせるように、事業ポートフォリオの再構築や全体計画をしっかりやるのが私の役割だと認識している。事業ごとに収益性や成長性をもう一度よく吟味したうえで、改革が必要な事業はその対応策を、収益事業はさらなる成長戦略を練る。そうしたマスタープランの策定作業に取りかかっており、9月末までに骨子を固めたい。
5:ぎくしゃくしていた大株主の金融3社との関係は?
私が社長に就任して以降、3社の経営幹部とは密接なコミュニケーションをとっている。経営の大きな方針だとか、全体計画をもう一度見直して来年度からの新中期経営計画につなげていくという枠組みについては、当然理解を得ている。今後もしっかり意思疎通しながら、再建を円滑に進めていく。
(書き手:渡辺清治)
さの・せいいちろう
1952年生まれ。77年関西学院大学卒。一貫して人事畑を歩み2005年に執行役員。三井住友銀行など大株主の金融3社の意向で井植社長が更迭され、07年4月に社長就任。6月に取締役に選任される予定。
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