やはり泣くのは非正社員、吹き荒れる「派遣切り」の嵐

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 「泣き寝入りせず職場復帰できるよう頑張りたい」。キヤノンで期間工として働いてきた宮田裕司さん(29)はそう力を込める。宮田さんはキヤノン非正規労働者組合の一員として偽装請負を告発。昨年10月に同社の期間工となった。今年2月、宮田さんは職場長からパワハラ行為を受ける。職場長は厳重注意に処されたが、8月末、その職場長を含む幹部の判断で宮田さんの雇い止めが行われた。地位保全を求める仮処分申請の場で、同社は宮田さんが技能レベルに達しなかったため行った、通常の雇い止めだと答弁している。

非正社員が次々と職を奪われる中、製造派遣の期間制限が目の前に迫っている。06年、偽装請負の社会問題化を受け、多くのメーカーは請負契約を派遣契約へと切り替えた。そのため09年3月以降、最長3年の期間制限が順次到来する。

非正社員は4割弱に急増 問題は有期雇用の是非

この製造派遣の「2009年問題」に関して、厚生労働省は期間満了後、指揮命令が必要な場合は直接雇用に、不要な場合は請負に切り替えるべき、との通達を示した。ところがメーカー側の関心は驚くほど薄い。「この通達で、これまでどおり人材サービスを活用するには請負体制の構築が不可欠となった。ただ大半のメーカーは様子見を続けており、これから半年で請負に切り替えるのはまず無理」と製造派遣幹部は語る。

その結果、メーカーはいや応なく直接雇用を進めることになるが、現状は「ほとんど100%が期間工採用」(製造派遣幹部)であるのが実態だ。一時は期間工としての直接雇用は正社員化への一里塚とも期待されたが、実際は真っ先にクビを切られる存在に変わりはない。結局、直接・間接問わず、3カ月程度の契約期間しか雇用が保証されない有期雇用労働をどう考えるかに、今後の議論は集約されてくる。

11月4日、政府は違法行為が頻発した日雇い派遣の原則禁止を柱とした、労働者派遣法改正案を国会に提出した。だが派遣契約期間しか雇用保証のない有期雇用である「登録型派遣」の規制は見送った。

厚労省の調査では、全労働者に占める有期雇用の非正社員の割合は37・8%へと急増。景気減速となれば、有無を言わせず切り捨てられる労働者がすでに4割弱に達しているという現実。それは道理にかなっているのか。今はそれを直視する格好の機会ともいえる。


(週刊東洋経済)

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