グリー、ガチャ操作プログラム問題の深刻度 「アナザーエデン」に1年以上組み込まれた

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ガチャの運営においては検証体制も重要な要素だ。ユーザーが月10万円以上支払うことも珍しくないスマホゲームだが、入手アイテムが確率によって決まるガチャの仕組み上、ユーザー側がガチャの不正を検証することは難しい。特に低排出率アイテムの排出率は5%以下のことが多く、「出ないのが普通」と言える。そのため、あからさまな不正でない限りガチャの操作をユーザー側が察知し、実証するのは困難だ。

この点について、CESAのガイドラインでは「有料ガチャの運営を担当する部門から独立した部門によって、ガチャの仕様の検証を行う」との規定がある。ただ、社外の機関による監査などはなく、ゲーム会社とユーザーの信頼関係で成立している状態だ。「だからこそ、ユーザーの了解を得ないガチャ操作は信頼関係を毀損する行為で、どのような形であっても越えてはいけない一線にあたる」と冒頭のゲーム会社幹部は話す。

別のゲーム会社社員は「プログラムの内容を見る限りは、これでグリーが儲けようとしたといった悪意は感じられない」と話す一方、「普通だったら実装時のチェックで弾かれる案件。なぜそれが1年以上も続いていたのか理解できない」と首をかしげる。

この点について、グリーは「当時の本ゲームの責任者(プロデューサー)が退職しているため、本プログラム導入時の社内資料等を調査した結果に基づき」と前置きした上で、本プログラムが導入されるきっかけになったのはガチャシステムの不具合だったと説明している。今年9月に起きたトラブル同様、当時から負荷がかかると不具合が発生するシステムだったようだ。

問題を発見できなかった審査部門

その中で「星3キャラが極端に重複して排出される」「星5のキャラが大量に排出される」という問い合わせがユーザーからあった。本来であれば不具合そのものが起きないようシステムを改修する必要があったが、本プログラムを導入することで解決を図った。これらは当時のプロデューサーの判断だったという。

本プログラムが長期にわたって動作し続けていた点については、グリーはCESAのガイドラインに準拠し、独立した品質管理・審査部門によってガチャの検証を行っていたが、問題を発見することができなかった。

というのも、審査部門では新規で開発されたガチャが検証の対象だったのに対し、本プログラムはあくまで「不具合の修正」としてゲーム開発部門内で処理されていた。そのため、開発部門から審査部門への審査依頼は行われず、プログラムの導入がゲーム内で告知されることもなかった。その結果、問題が見逃されていたという。

検証体制に不備があったのであれば、今回の件は「アナザーエデン」だけでなく、ゲーム事業全般に及ぶ話となる。グリーは子会社も含めた配信タイトルについてはすでに調査を行っており、問題と思われる事象は確認できなかったと回答。今後の対応については、すでにアナザーエデンのプログラムはすでに全面的な入れ替えを行ったほか、審査部門の業務フローを見直すといった再発防止策を全社的に検討しているとした。

一方で、本件について第三者委員会による調査など、追加調査については予定していないという。本プログラムに悪意があったか、景表法の問題があるかは別にして、ガチャ結果を操作していた今回の案件は結果として現在のガチャ運営体制に対する信頼を揺るがす話となった。第三者を介さず、あくまで自社内の調査と事後対応にとどめるのであれば、問題が発生した根本的な原因や詳細な再発防止策についてユーザーに十分な説明を行うことで「自浄能力」を示さなければならない。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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