選択迫られたリーマン社員、仁義なき人材争奪の修羅場

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 一方、リーマンの株式部門の人材にとっても、渡りに船だった。日本における株式業務は、野村のほうが圧倒的に強い。「野村に入っても、居場所はない」。リーマン株式部門の主要な人材は、ほぼ全員がバークレイズに移ることを決めた。

10月上旬。都内のホテルでバークレイズはリーマンからの転職者を対象にした説明会を開いた。そこに参加した出席者は、その光景に合点がいった。「転職については社内で誰とも話をしていなかったのに、見慣れた顔ぶればかりだった」と言う。ただ、「そこにいなかった人もいた。声がかからなかったのかも……」。

このほかにも、日本のさまざまな金融機関にリーマンの人材は散らばった。JPモルガン証券は11月17日付で、直近までリーマンでM&A部門を率いていた柴田優氏を、M&A部門の責任者に起用する。「みずほグループやゴールドマン・サックス、英系のスタンダード・チャータード銀行などにも移った人材がいるようだ」と関係者はささやく。

一方、より大胆な転身を果たそうとする者もいる。「自己投資部門にいた若手が、リーマンで培った経験を武器に投資ファンドを立ち上げようとしている」(関係者)。外資系のファンドがほとんど活動をやめている現在をチャンスと踏んだわけだが、この逆風下で資金を集め切れるか。

リーマンから一般事業会社に転職した者は、ほとんどいないようだ。リーマンの元社員はこう証言する。「一度、外資系金融機関で破格の高給というアメを味わってしまうと、もうほかの業種では働けない。一般事業会社への転職は最後の手段だ」。

野村がリーマン日本法人の社員に何を期待しているのかは定かでない。位置づけがあいまいな中で、彼らは漠とした不安をぬぐえない。

東京・六本木にそびえ立つ六本木ヒルズ森タワー。野村へ移籍したリーマン出身者は、看板だけが「野村グループ」に掛け替わったオフィスに出社する毎日だ。11月上旬時点では正式な辞令が下りていないので、本格的な業務再開に至っていない社員も少なくない。野村の本体とはオフィスも別なので、融和がどれだけ進むかも未知数だ。

「失業は避けられたのでひとまず安心だが、本当によかったのかどうかは、まだわからない」。あるリーマン出身者は、こうつぶやいた。


(週刊東洋経済 写真:今祥雄)
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