孫正義が「未来のトヨタ」に見た確かな金脈 元社長室長が読み解く孫社長の「脳内」

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孫氏は成功をもたらした自らの能力を冷静に分析している。

「僕は世の中を大きく変えるような発明をしたわけではない。何か一つだけ平均的な人と比べて特徴的な能力があるとすれば、それはパラダイムシフトの方向性とその時期を読むことに関心が強いということだ」

たしかに、スマホ革命の最強の武器、iPhone も自分で発明したわけではない。スティーブ・ジョブズとアライアンスを組んで、商品を独占販売したものである。

スマホ革命のジョブズ、モビリティAI革命の豊田章男

スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表する2年前のことである。孫氏は自分がモバイル(携帯電話)ビジネスに参入するのであれば、どうしても武器が必要であると考えた。そして、世界最強の武器をつくるのは誰かと考えた。そんな人間はただ一人、スティーブ・ジョブズだけという結論に達した。

ジョブズにモバイル機能のついたiPodのスケッチを持って会いに行ったところ、「この新しい携帯電話の話は誰にもしていないのに、君が最初に会いに来た。だから君にあげよう」とジョブズが言い、ソフトバンクのiPhone独占販売につながったことは今ではよく知られている。

孫氏は新ビジネスに入る時、誰が「最強の武器」をつくれるかを考える。

着々とモビリティサービス、モビリティAIという新ビジネスに入ろうとしている孫氏である。「最強の自動運転車」「最強のモビリティサービス」を創れるのは誰かと考えたとき、トヨタと豊田章男氏しかないと「脳内」で結論したのだろう。

孫氏はトヨタから提携の申し出があった時、「えっ、マジか」と2度思ったと明かした。だが、私にはこれは孫氏特有のパフォーマンスと思えた。

ソフトバンク社長室長を退任し、ソフトバンク顧問となった2015年頃のことである。豊田章男社長が孫社長を訪問され、自動車産業の未来について話し合ったと聞いた。年齢も近く、一歳違いなので、意気投合したとの事であった。

このときすでに社長室長を退任していたので、筆者は同席していない。だが、パラダイムシフトを読み、七手先を読んで成功のための布石を打っていく「孫氏の兵法」は今回も実行されたに違いない。2018年のトヨターソフトバンクの提携はすでに3年も前から準備されていたのである。 

また、「組むならナンバー1」というのも孫氏の基本である。「ナンバー1と組むことに成功すれば、黙っていてもすべてがうまく行きます」とも語っている。世界一のトヨタと組むことは「孫氏の兵法」からいうと定石なのである。

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