トヨタ自動車とソフトバンクグループが10月4日、提携を発表した。新しいモビリティサービスの会社「MONET Technologies(モネテクノロジーズ)」を共同出資で設立する。新会社では、移動のビッグデータを人工知能(AI)で解析し、需要を先取りして配車できるようなサービスを提供していくことから始める。
トヨタは、「カイゼン活動」に象徴されるように、既存の手法を少しずつ改めていく漸進的な改革を得意とする。一方、ソフトバンクはM&Aを得意として、破壊的なイノベーションを推進してきた数少ない日本企業と言える。経営者像もまったく違う。トヨタの豊田章男社長は創業家出身の3代目で、ソフトバンクの孫正義社長は裸一貫からの叩き上げだ。
トヨタの株式の時価総額は日本企業で1位。そしてソフトバンクは2位だ。企業風土、経営哲学がまったく異なると言っても過言ではない両社がなぜ、結び付いたのか。提携内容についてはすでに主要メディアが報じているので、本稿では提携の背景とも言える自動車業界の大きな潮流について解説しよう。
トヨタとソフトバンクの間にある共通性
異質の両社だが、実は産業の変化の流れを捉える視点には共通性があった。筆者がそれを感じたのは、ソフトバンクが米国のロボットベンチャー、ボストン・ダイナミクスを買収したときだった。同社は軍事技術から生まれた企業で、段差があったり、石垣があったりと、どんな状況でも2足歩行しながら2本の手でモノを運ぶことができるロボットを開発している。グーグルの親会社からソフトバンクが買収したが、一時はトヨタも買収に名乗りを上げていた新興企業だ。
ボストン・ダイナミクスなど買収した企業の経営者らを日本で紹介した「ソフトバンクワールド2017」で、孫氏はこう語った。
「テクノロジーの進化によって医療、交通、農業といったあらゆる産業が再定義される。AIによるトラフィックデータの解析によって、道路交通状況は最適化され、タクシーは呼ぶ前に来る時代になるだろう」
そして筆者が最も注目した孫氏の発言はこれだった。
「我々が他社と競い合っていた回線数は70億回線が最大。これからは1兆回線の市場に広がる」
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